新たに規定されることとなった定型約款について

投稿日:2021年11月8日 更新日:

定型約款

平成29年6月2日に公布された民法の改正法が、令和2年4月1日から施行されました。

今回は、改正民法で新たに規定されることとなった定型約款について、定型約款とは何か?どのようなものが定型約款に該当するのか?定型約款に該当するとどうなるのかについて今日は解説します。

定型約款とは?

第五百四十八条の二

定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいう。以下同じ。)を行うことの合意(次条において「定型取引合意」という。)をした者は、次に掲げる場合には、定型約款(定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいう。以下同じ。)の個別の条項についても合意をしたものとみなす。

一 定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき。

二 定型約款を準備した者(以下「定型約款準備者」という。)があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき。

2 前項の規定にかかわらず、同項の条項のうち、相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして第一条第二項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては、合意をしなかったものとみなす。

以上が改正された民法の条文ですが、これだけ読んでも少し難しいですね。

要するに、電気会社、ガス会社、ネット通販などの、企業が不特定多数の消費者と同じ内容の取引をする場合に示す契約の条件の事です。

改正となった経緯

約款は、日常生活で広く利用されているにもかかわらず、改正前民法ではこれといって特に明示的な定めがありませんでした。

「約款」に基づく取引は、当事者間で、〇〇円で、電車に乗る、電気やガスを利用する、といった様な曖昧な内容の合意しかないのが通常です。

不動産の取引などの約款は本来細かい定めがあるのですが、これらは当事者が作成したものであり、利用者が条項の内容を認識していないことも珍しくありません。

当事者間の合意があるからこそ、契約は法的拘束力を有するというのが基本的な考え方です。

しかし、一方当事者において認識の薄い「約款」に、当事者間の合意に基づく法的拘束力があるとするには難しい問題があります。

一方で、定型的な内容が想定される契約類型においては、個別の契約交渉がなじまず、「約款」の法的拘束力を認めないと、円滑な取引を阻害させることになってしまいます。

約款に含まれる条項が契約内容になることが争われた裁判では、判断が難しく民法の透明性にも疑問が投げかけられていました。

そこで改正民法は、「約款」に関するルールをもうけ、明確化を図ったというわけです。

定型約款の定義

  1. 不特定多数の利用者に対する取引であること
  2. 取引の内容の全部又は一部が画一的であることが双方にとって合理的な取引であること
  3. 事業者が準備した条項群であること

取引に個性があったり、特定の者に対する取引は、定型約款とはいえません。具体的には、労働契約などは、取引に個性があり、定型約款ではないと考えられます。

定型約款といえるためには取引の内容が画一的である必要があります。もっとも、画一的であるからといって必ずしも定型約款といえるわけではなく、一方当事者において契約内容を定めることにつき合理性が認められる必要があります。

定型約款と認められるには、事業者が準備したものである必要があり、契約当事者が個々の条項を交渉して契約締結するという場合は含まないと考えられます。

例えば、もともと個別交渉を予定している合意書の条項などは、この要件を満たさないと考えられます。

「約款」と呼ばれている場合でも、民法上の定型約款に該当するか否かは、上記①~③の要件を満たすかどうかで判断されます。

そのため、最終的には個別判断にならざるを得ませんが、一般的に、「○○規約」等の名称で既に作成されたもので利用者に提示されるものは、民法上の定型約款に該当する場合が多いのではないかと推察され、具体的には、電車、バスの運賃やホテルの宿泊契約、電気供給約款、保険約款に加え、インターネットショッピングサイト利用規約、などが定型約款の例として挙げられます。

他方、住宅ローン契約書や賃貸借契約などは、画一的な要素を持ちつつも、交渉が可能な場合もあり、現時点において定型約款といえるかは、争いがあります。

定型約款に該当するとどうなるか

定型約款は、不特定多数の顧客との間で用いられるものであるため、そのような多数の消費者との取引を円滑に行えるように、消費者が定型約款中の個別の条項を認識していなくとも、それについて合意をしたものとみなされます。

個々の消費者との合意がなくとも、一定の要件を満たせば定型約款の個別の条項を変更できる事とされました。

一方、個々の消費者が定型約款の内容を十分理解をしないまま合意が成立したり、条項の内容が変更されたりする可能性があることから、消費者を保護するため、消費者の請求により定型約款の内容の表示義務が生じることとされました。

以下、条項の認識がなくても合意したものとみなされる一定の要件ついてです。

 

① 定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき

② 定型約款を準備した者があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき

 

ここでいう「定型取引合意」とは、例えば、物の売買に関する定型取引について、どの店で何をいくつ売買する等の、定型「取引」の内容について合意することを指します。

また、①の「定型約款を契約の内容とする旨の合意」は、特定の定型約款を契約で使用することについての合意を指します。

これは、定型約款中の個別の条項についてまで顧客が認識している必要はなく、ある定型約款を用いるという限度で合意されていれば足りるという意味です。

 

②については、①定型約款を契約の内容とする旨の合意がなくとも、定型約款準備者が当該定型約款を契約の内容とする旨を顧客に表示していればよいとするものです。

例えば、インターネットによる売買において、契約締結までの画面中に購入約款が示され、これが契約の内容となることが表示されている場合などが挙げられます。

 

もっとも、上記の要件を満たす場合でも、個別の条項の中で、「相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項」であって、その内容が取引上の社会通念などに照らし、信義則に従い誠実に行うべき義務に反し(民法1条2項)、顧客の利益を一方的に害する場合には、その条項については合意をしなかったものとみなされます(第548条の2第2項)。

この規定は簡単に言うと消費者に不利な内容であって、いわゆる信義則に反するような内容(故意に相手に損害をもたらす条項)については、消費者保護のため、みなし合意の効果が生じず、合意をしなかったものとみなされるとしたものです。

 

以上今回は長くなりましたが今回は定型約款についてでした。

おしまい。


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