今回は事務管理についてです。事務管理とは、法律上の義務がないのに、他人のために、他人の事務を処理することをいいます。
例えば、海外旅行に行った隣人の家屋が台風によって雨漏りしたとしましょう。放っておけば家の中が水浸しになり、床が腐り落ちてしまうかもしれません。そこで善意で隣人宅に入り屋根の修理をしたとします。このケースでは本来ならば隣人の許可を得ず隣人宅に入る事は違法行為ですが、緊急事務管理にあっては違法行為を阻却します。今回はこのケースを題材として事務管理について見ていきます。
屋根を修理した費用はどちらが払うのか?
旅行に出かけていた隣人からすれば、委任契約もなく勝手にやった事、ということができるかもしれませんが、修理した側(管理者と呼びます)は隣人を思い、善意でやってるのにも関わらずこの費用を払うという事ではあまりにも不便ではないでしょうか?
そこで民法ではこの様に規定しています。
第702条
- 管理者は、本人のために有益な費用を支出したときは、本人に対し、その償還を請求することができる。
※ただし、このケースにおいても管理者が隣人の意思に反して事務管理をした時は利益を受けた限度においてのみ返還すれば良いとしています。
途中でめんどくさくなったらやめても良い?
第700条
管理者は、本人又はその相続人若しくは法定代理人が管理をすることができるに至るまで、事務管理を継続しなければならない。ただし、事務管理の継続が本人の意思に反し、又は本人に不利であることが明らかであるときは、この限りでない。
第697条
- 義務なく他人のために事務の管理を始めた者(以下この章において「管理者」という。)は、その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって、その事務の管理(以下「事務管理」という。)をしなければならない。
- 管理者は、本人の意思を知っているとき、又はこれを推知することができるときは、その意思に従って事務管理をしなければならない。
条文ではこの様な文言となっています。つまり、今回のケースでは管理者は特に隣人との約束や意思を推知できる時以外には事務管理を継続しなくてはなりません。
事務管理を始めた時は本人に通知しなくてはいけないか?
通知しなくてはいけません。
本人が管理できる時まで事務管理を継続し、現在の状況を隣人に通知しなくてはなりません。管理費用の償還請求ができる以上本人に知らせておく事は重要でしょう。
更にその後の工事等に関する問い合わせがあった時は、遅滞なくその経過を報告する義務があります。
さて、こういった規定が事務管理には規定されています。道徳的な部分も多いかと思われますが、法的にもこういった規定が存在することを覚えておきましょう。
今回はここまでです。