共有①
令和3年の民法改正で【共有】が大きく改正されることとなりました。今回はどういった改正なのか施行時期は令和5年となるので、まだ先ではありますがいち早く見ていきたいと思います。
背景
共有者の中に不明共有者がいる場合には、利用に関する共有者間の意思決定や持分の集約が困難となります。遺産分割前の相続財産も共有の状態であるため、遺産分割がされないまま長期間放置される事により、不明相続人が生ずるという事となると、同様の問題が生じてしまいます。
そこで共有物の利用や共有関係の解消促進を、図る為に、共有に関する規定を整備することとしました。
以下が改正点となります。
❶共有物を使用する共有者がいる場合のルールの明瞭化・合理化
❷共有物の管理の範囲を拡大、明瞭化
❸管理に関する決議の際に賛否を明らかにしない共有者がいる場合の管理に関するルールの合理化
❹所在等不明共有者がいる場合の変更・管理に関するルールの合理化
❺共有者が選任する共有物の管理者のルール整備
❻共有の規定と遺産共有持分に関するルール整備
今回は❶と❷をご紹介します。
❶ 共有物を使用する共有者と他の共有者との関係等
第249条 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
2 共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。
3 共有者は、善良な管理者の注意をもって、共有物の使用をしなければならない。
※赤部分の2項3項が新設
今回新設された2項、3項の経緯としては、各共有者その持分に応じて共有物を使用することができたが、他の共有者との関係でどのような義務を負うのか明確ではなかった。そこで今回この2項が新設されました。
2項は共有物を使用する共有者は、別段の別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を支払うべきと、し、3項では共有物の管理は、他人物の管理と同様である為、善管注意義務を負う。と明文化しました。
❷ 共有物の変更行為
第251条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
2 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。
※赤い部分が新設された部分
現行法上は、共有物に軽微な変更を加える場合であっても、変更行為として共有者全員の同意が必要と扱わざるを得ない為、円滑な利用、管理を妨げてきた経緯があります。また、所在不明共有者(必要な調査を尽くしても氏名や所在が不明な共有者)がいる場合には、その所在等不明共有者の同意を得ることができず共有物に変更を加えることができませんでした。
この為、1項には新設箇所(赤でカッコ書きの部分)軽微な変更は持分の価格の過半数で決定できることとしました。
2項はまるごと新設です。
所在等不明共有者がいる場合には、裁判所の決定を得て、所在等不明共有者以外の決定を得て、所在等不明共有者以外の共有者全員の同意により、共有物に変更を加える事ができるものとしました。
今回は共有の改正、①と②を紹介しました。
本日はここまでです。