登記義務者の所在が知れない場合等における登記手続きの簡略化

投稿日:2022年8月19日 更新日:

【前編】

 

今回は、存続期間が満了しているものの登記についての改正です。

これは例えば、地上権や、賃借権、買戻権などの権利の登記が存続期間が満了しているにもかかわらず、当事者が申請を怠ったため、何十年経っても登記簿上では未だその権利が存続しているような場合が多々見受けられます。何か理由があって登記簿から抹消できない場合もあるでしょう。

例えば土地の所有者等がどこに住んでいるかわからない。所在不明の場合などです。今回はこの点についての改正がされました。ここもよくみていきたいと思います。

 

登記義務者の所在が知れない場合の登記手続きの簡略化の背景

登記された存続期間が満了している地上権等の権利、や買戻の期間が経過している買戻の特約など、既にその権利の実態的には消滅しているにも関わらず、その登記の抹消されること無く放置され、権利者、義務者が行方不明となったり、実態を失ってその抹消に手間やコストを要するケースが少なからず存在するとの指摘があります。

旧法には登記事務所の所在が不明である場合における登記の抹消についての特例があるものの、手続き的な負担が重いなどの理由で活用がされていない実情がある簡便に、所有権以外の権利に関する登記の抹消を可能とする仕組みが必要と考えられました。

 

単独申請の概要

(新不動産登記法69条の2)

買戻の特約に関する登記がされている場合、その買戻の特約がされた売買契約の日から10年を経過した時は、実体法上その期間が延長されている余地がないこと、と考え登記権利者(売買契約の買主)単独での当該登記の抹消を可能としました。

 

(新不動産登記法702)

登記された存続期間が既に満了している地上権等の権利に関する登記について、現行の不動産登記法所定の調査よりも負担の少ない調査方法により権利者(義務者)の所在が判明しない場合には、登記権利者単独での当該登記の抹消が可能となりました。

※ただし、公示催告の申立てを行い除権決定を得ての単独抹消は以前と同じく必要。

 

(新不動産登記法第702)

解散した法人の担保権(先取特権等)に関する登記について清算人の所在が判明しない為に、抹消の登記を申請することが出来ない場合において、法人の解散後30が経過し、かつ、被担保債権の弁済期から30年を経過した時は供託等をしなくとも、登記権利者(土地の所有者)が単独でその登記の抹消を申請することができるようになりました。

 

次に、買戻権の抹消の簡略化の新たな条文を見ていきたいと思います。

 

10年を経過した買戻特約登記の抹消手続きの簡略化

(買戻しの特約に関する登記の抹消)

第69条の2

買戻の特約に関する登記がされている場合において、契約の日から10年を経過した時は第60条の規定にかかわらず、登記権利者は、単独で当該登記の抹消を申請することができる。

 

この条文のポイントとしましては、公示催告手続きを経ずに登記権利者が当該買い戻しの特約の登記の抹消を、単独で申請することができます。

つまり登記義務者の所在不明は要件ではない為、登記義務者の住民票や戸籍等に関する調査も不要となります。

 

買戻特約の登記名義人の手続保証

新不動産登記法第69条の2の特則に基づく申請により、買戻の特約の登記の抹消された場合、登記義務者の登記記録上の住所に宛てて登記官が通知をする旨の規律を法務省令に設けることが予定されています。

 

今回はここまでとします。

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