取締役の欠格条項に関しての改正点

投稿日:2021年12月6日 更新日:

今回も会社法の改正点です。従来までは成年被後見人、被保佐人は欠格事由とされ、成年被後見人は取締役になる事はできませんでしたが令和3年に改正され欠格事由の条項が削除されました。

本日はこの改正点を見ていきたいと思います。

 

成年被後見人、被保佐人、被補助人とは?

成年被後見人とは、民法では以下のように、定義されています。

  • 成年被後見人 … 精神上の障害により、事理を弁識する能力を「欠く」常況にある者
  • 被保佐人 … 精神上の障害により、事理を弁識する能力が「著しく不十分」である者
  • 被補助人 … 精神上の障害により、事理を弁識あする能力が「不十分」である者

と、上記の様に民法は定義しています。上から順に行為能力が低い方を表しています。

 

つまり、簡単にいうと、

  • 成年被後見人 … しっかりしているときがほとんどない方
  • 被保佐人   … 忘れるときがだいぶん増えてきたが、しっかりしているときもある方
  • 被補助人   … 以前と比べて、忘れっぽくなった方

といえるでしょう。

 

ちなみに、成年被後見人の代理人等のことを、成年後見人といいます。
同じく、被保佐人の代理人や同意権・取消権を行使する人を保佐人といい、被補助人の代理人や同意権・取消権を行使する人を補助人といいます。

 

成年被後見人の選挙権剥奪に対する違憲判決

2012年まで成年被後見人は選挙権を失うという公職選挙法の規定がありました。

しかし、知的・精神障害者や認知症の人を中心に、ある障害者が国を相手取って起こした選挙権回復訴訟の最高裁の違憲判決により約2ヶ月で公職選挙法は改正され、現在約13万6400人にも上る人々が、一律に選挙権を回復し、投票できることとなりました。(改正案が5月27日に参議院を通過し成立)

 

当時の改正の流れはこちら↓

https://wedge.ismedia.jp/articles/-/2847

こういった社会の流れに伴い、重度の障害者が取締役であってもいいだろうと。さまざまな議論を経てようやく会社法も改正に乗り出します。

 

令和3年改正(今回の改正点)について

上記の改正から約10年、成年被後見人及び被保佐人であっても、取締役等に就任できるようになりました(会社法第331条第1項第2号の削除)。

 

成年後見制度の理念である「自己決定権の尊重」、「残存能力の活用」、「ノーマライゼーション」に基づき、法による制限が少しずつ緩和されてきています。

 

就任承諾は誰がする?

(会社法第331条の2第1項)

成年被後見人が取締役に就任するには、その成年後見人が、成年被後見人の同意(後見監督人がある場合にあっては、成年被後見人及び後見監督人の同意)を得た上で、成年被後見人に代わって就任の承諾をしなければならない。

 

(会社法第331条の2第2項)

被保佐人が取締役に就任するには、その保佐人の同意を得なければならない。

 

(会社法第331条の2第3項)

第一項の規定は、保佐人が民法第八百七十六条の四第一項の代理権を付与する旨の審判に基づき被保佐人に代わって就任の承諾をする場合について準用する。この場合において、第一項中「成年被後見人の同意(後見監督人がある場合にあっては、成年被後見人及び後見監督人の同意)」とあるのは、「被保佐人の同意」と読み替えるものとする。

 

また、当然の規定として下記の通り定められています。

成年被後見人又は被保佐人がした取締役の資格に基づく行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない(会社法第331条の2第4項)。

 

民法に代理という制度があります。例えば代理人を選ぶ際、この代理人は行為能力を必要としません。つまり未成年であっても、成年被後見人であっても構わないという事です。

もちろん代理人を選ぶ者には行為能力が必要とされている事から、代理人に不適切な人間を選んだとしてもそれは選任者の責任なので別に構わないよ。という意味です。

 

この民法の規定と足並みを揃えた形となります。

 

注意点として

最後になりますが注意点として。

 

従来の取締役が元気に業務されている場合に病気になり、成年被後見人になってしまった。

 

この様なときには一時、取締役としての任期は終了します。これは民法の委任事由としての欠格事項として取締役が退任されるわけです。細かい話は省きますが、仮にこの様な場合になってもまだ「取締役を続けてほしい!」のであれば再度、取締役を選任すればいいのです。

以前は成年被後見人、被保佐人になると取締役として欠格事由(回復するまでなれません。)

だった部分が今回の改正により削除された事に注意してください。

 

今回の改正は成年被後見人、被補佐人の方でも社長になれる!と非常に前向きな改正です。

司法書士受験生にも非常に重要な規定ですのでさまざまな方に是非読んでいただきたく存じます。

 

今回はここまで。

 

 

TEL:03‐5918‐9452
お気軽にお電話ください。