今回もマイナーな分野の改正点をご紹介していきたいと思います。
今回の改正は令和元年の改正で令和2年4月1日に施行されています。
それでは見ていきましょう。
不動産競売における暴力団員の買受け防止の方策
趣旨
改正前の民事執行法においては、暴力団員等の買受け自体を制限する規定が存在しませんでした。
その為、暴力団員等が不動産競売手続きに関与する事を防止することはできませんでした。
現に警察庁の調べによりますと、約200の暴力団事務所である物件が不動産競売の経歴を有していることが判明しています。
これは、多くの自治体で暴力団排除条例が制定されるなどし、一般の不動産取引である任意売却においては、暴力団排除が進んできた結果、一般の不動産取引で不動産を買うことができない暴力団ないし暴力団員が、不動産競売において購入した建物を暴力団事務所として利用する等の問題が増加してきた背景にあります。
もし近所の不動産が、不動産競売手続きで売却され、近所に突然暴力団事務所ができたら、平穏な生活が侵される恐れが高まるかもしれません。
そこで、今回の民事執行法の改正(令和2年4月1日施行)では、不動産競売手続きにおいて、暴力団の購入を制限する規定が新設されました。
どのように暴力団の購入を規制しているのかについて説明します。
どの様な人たちが競売規制されるの?
当然ながら国が指定した暴力団員はこれに該当します。これに加え過去に一定の時期暴力団員であった者や、法人役員に暴力団員等がいる者や、暴力団員等の指示によって買受けする申し出をした暴力団員以外の者もこれに含まれます。
競売の流れ
改正内容のお話をする前にまず競売の一般的な流れをご紹介します。
(1)買受の申出
まず、購入したい不動産について、買受の申し出をします。
(2)入札期間
入札期間に、買受価格を提出します。
(3)最高価買受申出人の決定
裁判所が、入札のあった中から、最高価買受申出人を決定します。
(4)売却の許可・不許可の決定
裁判所が、売却決定期日において、売却の許可・不許可を決定します。
ざっとこのような流れで、不動産競売手続きは進んでいきます。
改正内容
不動産の買受けの申出をしようとする場合には、暴力団員等でないこと又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者ではないことを陳述しなければならないこととされました(民事執行法65条の2)。
更に先述した通り、暴力団員「等」とはその者が法人である場合には役員に暴力団員がいないか、暴力団員の指示によった者でないか?等もこれに当たります。
陳述できなければ、買受の申出をすることができません。
陳述だけでいいの?
相手は反社会勢力ですから、本人らがわざわざ競売物件を下見し、入札し、「はい。私は暴力団員です。」と言うわけがないのは明らかでしょう。
そこで裁判所はこの最高買受人が暴力団員等であるかどうかの必要な調査を執行裁判所を管轄する都道府県警察に嘱託しなければならない事としました。
この調査の結果、上記の暴力団員等に該当すると売却不許可事由となり、競売は次順位買受人がいればその者が引き継ぐ形となります。
最後に。
昨今の暴力団員は不動産を購入できないのは当然であり、車の購入、銀行口座を作ることもできません。
確かにこれが犯罪行為を組成する物であるとするのであれば規制は至極当然です。
しかしそれは憲法に定める最低限の人権を奪う法としたものではないか?と議論も進んでおります。
一般市民の感覚で一般市民秩序を思えば仕方ない規制の様な気もしますが、憲法、法律に関わる者にとってはこれは難しい問題になっている様です。
その話もいずれまた。
今回はここまでです。読んでくださり有り難うございました。