国内の子の引き渡しの強制執行に関する規律の明確化

投稿日:2021年12月17日 更新日:

民事執行法改正論点として、①財産開示制度、②暴力団員の不動産競売の買受け防止の方策③債権執行(前編、後編)とやってきましたが今回が最近の民事執行法改正点の最後になります。(是非過去のブログもご覧ください。)

 

今回は子供が離婚などによって親権を持っていない側が住居を移し、子供を連れ去ってしまった場合に裁判所の執行官が法に基づき、子供を取り返す方法が、条文上明文化されました。

今回はこちらを見ていきたいと思います。

 

 

 

改正の趣旨

以前までは動産と同じ扱いによって動産執行の規定を類推適用するしかありませんでしたが、離婚の際に子どもの親権や監護権者について争いとなった場合,争いが激化してしまうことが少なくありません。

動産執行の規定も万全ではなく、裁判の実効性を確保しつつも、この利益に配慮する等の観点から規律を明文化する必要がありました。

これは国内の問題にとどまらず、国際的にも,日本においてハーグ条約上の子の引き渡しの実効性が確保されないことが問題となっていました。

そこで,この問題点について、2019年5月10日民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の改正が参議院で可決され、子どもの引き渡しに関するルールが変更されることとなりました。

 

 

改正による新しいルール

まず、強制執行の申立てが、間接強制の決定が確定した日から2週間経過したときだけでなく、間接強制では引渡しの見込みがあると認められないときや子の急迫の危険を防止するために必要があるときにも認められます(新民事執行法174条2項,新ハーグ条約実施法136条)。

つまり必ずしも先に間接強制を行うことなく、強制執行の申立てができるようになっています。

※間接強制とは

この場合。引渡しに協力しない場合に,引き渡さない場合には1日3万円等と金銭の支払いを命じることで,義務の履行を促す方法。この様に間接的に圧力をかける事で引き渡しの執行をしやすくします。

 

従前までは動産執行の類推適用により、この様な手続きでしか子の引き渡しを促せませんでした。

その上で、実際に強制執行の手続きを行う際には、執行官は子どもが住んでいる家に引き渡しの義務を負う親の同意なく立ち入り、子どもを捜索して連れてくることができるようになりました。

また、これまで引き渡しの際には引き渡しを命じられた親の同席が必要とされていましたが,これを不要としました。

その代わり、引き渡しを受ける親が引き渡しの現場に同席することとして、執行官等の知らない人ばかりの中で引き渡しが行われ、子が不安になることがないように配慮しました(新民事執行法175条5項,新ハーグ条約実施法140条)。

さらに、債務者(連れ去った親)の住居その他債務者の占有する場所以外の場所においても、相当と認められるときには、占有者の同意や許可を受けて引き渡しの執行を実施できることとなりました(新民事執行法175条2項,新ハーグ条約実施法140条)。

この結果、学校、幼稚園、保育所等においても子の安全やプライバシーに配慮しつつ執行を行うことができるようになりました。

 

いかがでしたでしょうか。

あまり身近ではない民事執行法ですが、こういった事は意外と身近に起きており、誰にでも起こりうる事なのかも知れません。

 

特に、離婚においては、「財産分与はどの様にしたらいいだろう。」「子供の氏はどうしよう。」「親権は」、「監護者は」、、と。様々な法的手続きが必要となり、これを知らないでいると、もう二度と後戻りできない事が非常に多くあります。

 

早い時期に手を打つ事が非常に重要となる事は言うまでもありません。今すぐに必要となる知識ではありませんが、いつかこの様なピンチに陥った時には専門家に相談する事が大切です。

 

頭の片隅にでも置いておいてくださると幸いです。

 

今回はここまでです。

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