保証⑧ 賃貸借契約の保証人の責任②

投稿日:2022年3月29日 更新日:

今回も引き続き保証についてですが、その中でも引き続いて賃貸借契約の保証について第二回目です。例によってやや細かい論点ではありますが今回は裁判例を見てみたいと思います。それでは早速行きましょう。

 

判例①賃貸借契約の更新と保証人の責任

Q1. Aは、知人Bに頼まれて、知人が借りているアパートの保証人になりました。Bは契約の更新はせず転居すると話しており、その後Bや家主からなんの連絡もなく5年が過ぎた時、家主の管理会社から家賃を滞納しているので支払って欲しいとの通知を受けました。

この時、更新したことも知らされていないAは滞納した家賃を支払う必要があるか?

 

A1、賃貸借契約上の賃借人の債務について、賃貸人との間で保証契約を締結した場合に賃貸借契約が更新された場合にも、原則として更新後に生じた債務について、保証人としての責任を負います。

これは平成9年の判例ですが、民法改正後も生き残る判例であるとされています。つまりAは知らされていないとはいえ、この場合でも、保証責任を免れないという事です。ただし、すべての場合に更新後に発生した債務を保証人に負わせることが、予想の範囲を超え、保証人に酷な場合もあるため、保証人に対する履行請求が信義則に反するような場合には、保証人の責任が否定されるとしています。

 

 判例② 賃貸借契約の保証人からの解除権の行使。

 

Q2  Aは友人Bの依頼でアパートを借りる際の保証人となった。B は、度々家賃の滞納をしており、現在は職についていない。今後もBは延滞を繰り返すと思われるため、Aは保証契約を解除したいと考えている。解除は可能か?

 

原則として、保証人は一方的に保証契約を解除することは認められません。しかしながら保証人の責任は賃貸者契約上の賃借人の債務を保証し、保証期間も保証の責任の範囲も限定されていない事が多く、いかなる場合も保証契約を、保証人側で解除できないとすると、保証人にとって酷な結果となる場合があります。

そこで一定の条件が揃えば保証人側からの保証契約の解除を認めています。過去の裁判例で、期間の定めのない保証契約が締結されて相当な期間が経過し、かつ、賃借人がしばしば賃料の支払いを怠り、将来において誠実にその債務を履行する見込みがないにもかかわらず、賃貸人が依然として賃借人に当家屋の使用収益をさせ、賃貸借の解除や明渡しなどの措置を取らないような場合には、保証人は賃貸人に対する一方的な意思表示により、保証契約を解除できるとし、一定の要件の下での保証人からの解除を認めています。

A2、したがって、本設問でもそういった内情などがある場合には解除できる可能性はおおいにあるといえます。

 

判例③ 賃貸借契約上の保証人の地位の相続

 

Q3、Aの父がある会社の工場事業地を借りる際の保証人となっていた。その父が先日亡くなった。Aは保証人の地位を相続するか?

 

賃貸借契約での保証人の保証債務が相続されるか?との点について判例は、保証人の死亡によっても保証債務は消滅せず、相続人が相続債務を承継する。としている。

したがって、賃貸借契約の保証人がなくなった場合、保証人の地位は相続されるため、賃貸借契約が継続する限り、相続人は今後、新たに発生する賃料債務について、支払義務を負うことになります。

もっとも、相続放棄をすることによって保証人の地位に基づき発生する債務を免れる事ができるほか、既に発生している未払いの賃料債務について信義則上、その支払い義務が軽減される可能性がある。

 

相続人としては、相続開始後に速やかに賃貸人との間で保証契約を解消する手続きをする必要があります。

 

今回は以上となります。

今回の改正後にまた新たな判例が出る事もあるかもしれませんが、またその際にはこちらでご紹介していこうと思います。

 

 

 

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