2020年に改正された民事執行法。財産開示請求について。

投稿日:2021年8月30日 更新日:

今回も昨年に改正された民事執行法について解説していきたいと思います。

 

一般生活においては主にお金の貸し借りや離婚後の財産分与、養育費の支払い等で未払い案件が多発しており、これをなんとか回収できないものか。と考えられたものが財産開示請求制度です。
もともと存在している制度ではありましたが債務者が嘘の申告をしても罰則の無い事や、認められる要件が厳しかったことなどが挙げられ、殆どの債権者が利用する事がなかった制度でした。(ザル法などと呼ばれていた。)

 

具体的な例で見てみましょう。

 

AさんはBさんに100万円を貸しました。

その後、弁済期がすぎてもBさんはお金を返す事もなく連絡も途絶えてしまいました。
Aさんは司法書士に頼み貸金返還訴訟を起こし、これを裁判所が全面的に認めAさんは勝訴しました。

 

さて問題はここからです。

このAさんの勝訴により裁判所はBさんに対し「Bは○年○月に借りた100万円をAに支払いなさい」と書いてある判決書を手に入れます。
この判決書を債務名義と呼びます。
通常はこの債務名義に基づいてBさんの財産に強制執行することとなります。

(強制執行とは例えばBさんの所有している不動産や、車に対して裁判所が強制的に権利を取り上げてAさんに渡してくれる制度です。)

 

しかしそういった財産の無い(又は隠した?)Bさんに対しこの強制執行は功を奏しません。

 

ここで財産開示請求の出番です。

 

この時にある一定の要件を満たせばAさんはお金を借りたBさんを裁判所に呼び出し

 

裁判長「あなたの所有している財産を全部開示しなさい」

と、やれるわけです。

 

 

以下が要件です。(裁判所ホームページより引用)

(1) 民事執行法197条1項1号(要件A)

申立ての日前6か月内に実施された強制執行又は担保権の実行における配当や弁済金交付手続において,申立人が当該金銭債権の完全な弁済を受けられなかったとき

(2) 民事執行法197条1項2号(要件B)

申立人が,債権者として通常行うべき調査を行い,その結果判明した財産に対して強制執行等を実施しても,当該金銭債権の完全な弁済を得られないことの疎明があったとき

 

疎明とは通常の裁判で必要な証明よりも簡単な手続きで裁判官を納得させる行為です。

今回の事例で言えば、Bの借りアパートにある金目のものは殆どなく高級テレビ20万円だけだった。などと説明すればいいでしょう。

 

  • 今回特に大きく変わったのが罰則です。

 

以前は過料だけで済んだこの制度は前述した通り過料を払ってでも裁判所に出頭しない。

虚偽の申告をする。とう言う事態が相次いでおりました。

その為今回は宣誓をさせた上で6ヶ月以下の懲役、又は50万円以下の罰金 と逃げ得は許さない大きな方向転換が図られました。

(改正民事執行法第213条第1項)

 

  • 申立権者も従来より緩まった。

以前は申立権者は判決、調停調書のある者に限られておりましたが、今回の改正では

仮執行の宣言を付した支払督促、仮執行の宣言を付した損害賠償命令、金銭等の支払いを目的とする内容の公正証書等も財産開示手続の対象になりました。

 

これは例えば離婚後の養育費の支払いの定めなどを夫婦が公正証書で定めた場合にも適用があることとなりました。

 

こういった改正によって債権回収は従前よりも回収可能性が大きく上がったと言えるでしょう。
とはいえ財産の隠匿などに対抗すべくテクニックはまだまだ難しい知識や経験などが必要となってきます。
ご自身の財産を守る為に必ず専門家への相談を推奨致します。

 

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