家族信託のメリットやデメリットについて その①

投稿日:2021年10月15日 更新日:

昨今では超高齢化社会に伴い、認知症の親の介護や通院、施設への入所などによって実家の管理、売却等に大きな悩みを抱えてる方が増えています。

例えば父親の所有名義になっている不動産は、父が脳梗塞や、認知症などにより意志能力を失ってしまった場合には処分することが非常に難しくなってきます。

後見制度を利用するなどしても不動産を売るためには裁判所の許可を必要とし、これにかなりの時間と労力がかかることは否めません。

そういった近い将来起こりうる実家の管理、処分について家族信託が注目されています。

今回は全4回に渡って家族信託についてご紹介していきたいと思います。

 

家族信託とは何か?

家族信託とは信頼できる家族に自分の資産を託して財産の管理運用を任せる。という方法です。

前述した通り家族に事故や認知症などによって判断能力が低下すると資産が凍結される可能性があり、凍結されると次のような問題が生じる可能性があります。

 

  • 生活資金を管理している預金口座が凍結され引き出せない。
  • 介護医療費、老人ホームの入所費等を支出する為に実家を売却したいが売却できない。

 

などと、様々な理由があるとは思いますが、そうならない為の対策の一つが「家族信託」です。

 

家族信託とその他の信託の違い

信託の種類には「商事信託」と「民事信託」があります。

信託銀行などが行う営利を目的とした信託については「商事信託」、それ以外を「民事信託」といいます。

家族信託は民事信託の一種で、民事信託の中でも家族や親族へ託すものの俗称です。

 

それでは具体的な例として見ていきましょう。

 


 

上記の図でいうと

父が(委託者)、子が(受託者)と呼ばれます。

信託された財産の利益を享受するものを(受益者)と呼びます。

家族信託では委託者、受託者、受益者の3者が当事者となります。

財産の所有者である委託者(父)が遺言や信託契約によって受益者(子)に財産の管理処分の権限を与え、最終的に受益者が財産からの収益を受け取れるようにする形が一般的です。

また、委託者自身が受益者となることも問題なく、実際はこのパターンが多いです。

 

こうしておくことにより父が急な病気になり、家が空き家になった時早い対応で実家を売却し、介護費や医療費に当てることができます。

 

その他にも、受益者については第1順位者、第2順位者…というように亡くなる人が出た場合に継承する人を誰にするのかを決めておくことができますから、財産を持たせたい家族に優先的に収益を与えるというようなことも可能になります。

 

同様のことを遺言で行おうとすると財産を得らえなかった家族が※「遺留分侵害額請求」のような形で財産を分け与えるように訴訟を提起するというようなケースが考えられますが、家族信託では信託の対象とした財産は委託者固有の財産とは分離されるためこのようなトラブルを避けられる可能性が高くなります。

 

※遺留分侵害額請求とは?

例えば父、母、子2人の4人の家族がある時に父の死亡時の遺言書に「全ての財産を母に相続させる」とあった場合に子の一人は財産の1/4×1/2=1/8を遺留分として母に請求できます。

 

今回はこの辺にして次回も家族信託のメリットやデメリットについてお話ししていきたいと思っております。

 

おしまい。

 

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