4回に渡り信託についてお届けしましたが信託は今回が最後です。
今回は信託の終了事由についてです。前回お話しした信託財産については終了事由があります。見ていきましょう。
信託の終了事由 信託法163条以下
- 委託者および受益者の合意解除
- 信託の目的の達成または不達成
- 受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が1年間継続したとき
- 受託者が欠けた場合であって、新受託者が就任しない状態が1年間継続したとき
- 受託者が費用の償還等を信託財産から受けられないことにより終了させたとき
- 信託の併合
※「信託の併合」とは、受託者を同一とする二つ以上の信託の信託財産の全部を一つの新たな信託財産とすることをいいます(信託法第2条第10項)。 併合は、従前の各信託の委託者、受託者及び受益者の合意によってすることができます。
- 信託財産についての破産手続開始の決定
- 特別の事情により信託目的および信託財産の状況その他の事情に照らし、受益者の利益に適合するに至ったことが明らかで、裁判所が委託者、受託者または受益者の申立てにより信託の終了を命じたとき
- 公益を確保するため信託の存立を許すことができないと認められるときで、法務大臣または委託者、受益者、信託債権者その他の利害関係人の申立てにより、裁判所が信託の終了を命じたとき
上記の事由に当たると信託は終了します。
任意的に信託終了事由定めた場合。
信託財産が金銭のみとなる信託契約、いわゆる「金銭信託において、信託の終了事由の一つに「信託財産が消滅したとき」という条項を盛り込んでいる信託契約書が多く見受けられます。
委託者兼受益者たる老親名義の預金口座において本人の判断能力低下により払い戻しができない時、あるいは身体的な問題で銀行窓口に行けないなどの理由によりまとまったお金を下ろしたり送金したりできなくなる可能性があります。
いわゆる「預金口座の凍結リスク」です。
このリスクを回避する為、受託者となる子が管理する金融機関の口座(通帳名義に信託財産であることが明記されている「信託口口座」、又は単なる子名義の個人口座を親の金銭を入れておくために新規で開設した「信託専用口座」のどちらかを用意することが好ましいです。日常的に親(受益者)側が使っているお金以外の預金を親が元気なうちに移動しておくことが有益です。
金銭信託の便利なところは、預けすぎたと思えばいつでも受託者から戻してもらえます。一方で追加で預けたい財産が(タンス預金など)出てきた時に、「金銭の追加信託」というやり方で簡便に受託できます。
ここで話は信託の終了事由に戻りますが、例えば親の介護や病院の費用により受託者が管理する信託金銭が予期せず残高0となってしまった場合、その瞬間に法律上信託が終了してしまうという事態が生じます。
信託契約事態が終了してしまうと当然ですが、「金銭の追加信託」による補充をする余地が無く想定外のタイミングで信託契約が終了してしまう恐れがあります。
信託契約書はあらゆる事態を想定して契約条項を設けるべきですのであえて「信託財産が消滅した時」を任意の信託終了事項で定める時には注意が必要です。
もう一つ信託終了事由についての注意点があるのでお付き合いください。
受託者全員が死亡した時
前述した④信託の終了事由に当たる、受託者が欠けた時についてですが受託者は第一順位、第二順位と定めることができます。
例えば第一順位が長男、第二順位が次男であったとしましょう。この場合長男が死亡した場合、第二順位の次男が受託者となります。
この時に次男が亡くなった場合信託契約は終了となります。
子である受託者が2名とも亡くなる事は考えにくいですが、受託者が高齢である場合や、何名かを予備的に選任できない場合には清算手続きを行う清算受託者の選任をすると、その後の委任者の為の後見や、清算を行ってくれます。
清算受託者の選任等にも注意が必要ですので専門家に相談しましょう。
全4回に渡り簡単にではありますが信託についてご紹介しました。
当所では信託についての手続きや、契約書の作成、相談などを受け付けております。
お気軽にお電話ください。
おしまい。
わかりやすくありがとうございます!!