家族信託のメリット・デメリットについて その②

投稿日:2021年10月19日 更新日:

前回に引き続き、家族信託についてです。前回の記事では家族信託について簡単に説明しました。今回も家族信託のメリットデメリットについて見ていきましょう。

 

家族信託を使うメリット

親は財産を持っているけれど認知症の症状が出始めて財産を他人に取られてしまわないか不安…というような場合に、子供を受託者として財産の管理運用を任せ、親はその財産運用から得られる収益から年金のような形で毎月生活費を受け取るというような形も可能です。

受益者については第1順位、第2順位というように亡くなる人が出た場合に継承する人を誰にするのかを決めておくことができますから、自ら指定した子や、孫などに優先的に収益を与えるというようなことも可能になります。

 

成年後見制度よりも柔軟な財産管理が可能

判断能力が低下した場合、財産を管理してもらう方法の中で基本的なものといえば成年後見制度でしょう。

成年後見制度はここ数年でかなり普及してきましたが、デメリットも多く、実際に成年後見人と被後見人の家族の間ではかなりのトラブルが起きていることは事実です。

成年後見制度は、家庭裁判所が選任した成年後見人が、判断能力の低下した人の財産管理などを行うというもので、弁護士や、司法書士などの専門家が選任されます。

この制度のデメリットとは、ズバリ本人のメリットになることしかできない点です。

例えば相続税対策や資産の組み替えなどは原則として不可能です。他にもちょっとした事にお金が必要になったとしても後見人の許可が必要となったり、裁判所に提出する書類が多かったりと日常生活を支援、介護する家族や、介護者としては「後見人が財産をを持っていってしまって困った時に何もしてくれない!」や、「後見人は月に一回顔を出すだけなのに沢山の後見費用を取られる!」など、(実際には法的な手続きなども多く後見人さんは大変なお仕事をしています…) 様々な苦情が現場ではあります。

一方、家族信託であれば、本人の希望に基づいた柔軟な財産の管理ができますので、相続税対策も可能ですし、財産の管理は概ね受託者に委ねられるので初期にかかる公証人などの費用や不動産の名義を変えるための税金などを払えば後見制度と違い月々の支払いなどは基本的にありません。

(家族が委託者となり財産を管理するケース)これは大きなメリットでしょう。

それではデメリットも見ていきましょう。

 

家族信託のデメリット

①受託者を誰にするか?

家族信託の受託者は、親族内の信頼できる人ということになります。

本人が指名することには全く問題はありませんが、実際には誰が受託者として選ばれるかという場面で親族内で揉めるケースがあります。

家族信託では、本人の不動産の名義が受託者名義にになります。

受託者に選ばれなかった人としては、自分をのけ者にされているように感じ、面白く思わないかもしれません。

家族信託を活用する際には、受託者として選ばれない人にも十分な理解や、配慮を求める必要があります。

身近な人間同士だからこそ、争う事の無いよう慎重に手続きは進めましょう。

 

更に、不動産の名義が本人ではなく,受託者の名義に変わります。

これは実質的な名義は勿論本人であり、受託者はあくまで受託者なわけですから、所有者ではありません。

ですが登記簿上では専門家が見れば明らかに信託の登記がされているのが分かりますがまるで所有者が代わったかの様に記載されていきます。

名義が変わることへの抵抗感を持つ人も少なくありません。

この為こちらも丁寧な説明が必要となる事でしょう。

 

②身上監護権がない。

こちらは成年後見制度のメリットです。

成年後見制度ではご本人が例えば認知症を発症した後、施設の入所手続き、病院への入院手続きなどの身上管理をすることが出来ますが、家族信託ではこれはできません。

家族信託では財産管理をメインとしておりますのでこういった点ではいざというときには、成年後見制度が優れているかも知れません。

③亡くなった場合の財産の取り決め。

家族信託は、遺言のような機能を持っていますが、遺言書そのものではありません。

家族信託契約書に書かれていない財産については、遺言書で承継先を決めておく必要があります。

決めなかった場合には遺産分割協議を行うことになります。

遺産分割協議になってしまった場合、引き継がせたい人に遺産が渡らなくなってしまう可能性がある為注意が必要です。

 

以上、今回はここまでとします。

次回も引き続き家族信託について掘り下げていきます。読んで頂きありがとうございます。次回も宜しくお願いします。

 

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