今回は前回に引き続き、譲渡制限株式の取得、株式の売渡請求についてです。
前回のブログ記事では、基本的なことをお話ししておりますので、ぜひ前回の記事と併せてご覧ください。今回は株式を相続した相続人に対して会社側からの買い取る旨を請求することがができるのか?です。さっそく見ていきたいと思います。
相続人等に対する売渡しの請求(会社側からの請求)
(次回の続きから)
それでは譲渡制限株式の株主が死亡した時はどうでしょうか?
この場合、当然に株式は相続されます。
相続とは民法上、一般承継であり、譲渡に当たりません。その為、会社はその相続人を株主として認めなくてはなりません。が、しかし、会社にとって好ましくない者が株式会社に参加してくる可能性については相続等の一般承継の場合も、株式の譲渡の場合も特に変わりのないことです。
相続した子は親と同じ気持ちで会社に対しての想いがある訳ではありません。
そこで会社法は相続人に対して、一定の要件があれば、株式の売渡を請求することができる特別の規定を設けました。
相続人に対する株式の売渡請求の要件
要件① 定款の規定があること。
要件② 譲渡制限株式について一般承継があること。
要件③ 売渡請求をする旨の決議があること。
決議は株主総会の特別決議で行います。そしてこの決議の際には売主(相続人)は議決権を行使することができません。(※議決権を行使することができる株主がいないときを除く)
(株主総会特別決議とは)
特別決議とは、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成を必要とする決議である(会社法309条2項)。ただし、特別決議の定足数について、定款変更を行えば、3分の1以上の割合として定めることも可能である。また、特別決議の表決数について、定款変更を行えば、3分の2を上回る割合として定めることも可能である。
売渡請求の期間
当該株式会社が相続その他の一般承継があったことを知った日から一年
※この際株式会社は、いつでも売渡の請求を撤回することができます。
売買価格の決定方法は?
以下の方法によって定めます。
- 株式会社と売渡請求を受けた者との協議
- 株式会社又は売渡請求を受けた者が売渡請求の20日以内に裁判所に対して売買価格の決定の申し立てをした事による裁判所の決定
つまり一次的には会社と相続人の協議で定めますが、協議が整わないときには、請求のあった20日以内に裁判所に対して売買価格の決定の申し立てをすることができます。
この20日をオーバーしますと売渡請求は効果を失います。
上記の規定は譲渡制限株式についての規定です。譲渡制限が付されていない株は(公開株)特にこういった条件もありません。そもそも市場で売買をしている以上こういったことは想定した上であり、問題にはならないからです。
上記の売渡請求は会社の側からする請求ですが、逆に株式を相続した株主側からも買取りの請求をすることができます。会社側からする売渡請求との違いは、主な点は、非公開会社に限られること、期間制限が一年ではなく、株主が議決権を行使するまでといったところです。
株式会社を設立する際には、様々な注意点があることは当ブログで何度もお話ししている通りですが、長い目で会社を経営していく際にはこういった定款規定を設立する当初に設けておくことも重要です。株主が相続を開始してから、定款変更(株主総会特別決議)をするのでは決議が通らない可能性もあります。こういったリスクヘッジに関しましても当所では相談承っております。
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