遺産分割の調停又は審判の申し立ての取り下げ
今回も前回に引き続き、遺産分割の改正についてです。相続開始から10年経過後に遺産の分割の審判又は、調停の申し立てを取り下げるには相手方の同意が必要となりました。これは、前回ご紹介した通り、相続開始後10年を経過した後は、基本的には具体的相続分により遺産分割の制限が問題となります。今回の改正により削除された条文や新設された条文を今回はご紹介していきます。
前回の記事がまだな方はそちらをお先にお読みください。
家事手続法199条2項(新設)
第82条第2項の規定にかかわらず、遺産の分割の審判の申し立ての取り下げは、相続開始の時から10年を経過した後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない
※調停の申し立ての取り下げにも同じ規定があります。
遺産の分割の審判又は調停の申し立ての取り下げが、相続開始の時から10年を経過した後に問題となる場合においては、相手方の同意を得なければ効力を生じないとして他の相続人の利益を害さないようにしました。
民法908条の新設規定
第908条
被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。
2 共同相続人は、5年以内の期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割をしない旨の契約をすることができる。 ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。
3 前項の契約は、5年以内の期間を定めて更新することができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。
4 前条第2項本文の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、5年以内の期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。
5 家庭裁判所は、5年以内の期間を定めて前項の期間を更新することができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。
※赤字部分が新設条文となっております。
分割禁止期間を原則5年以内,更新しても最長10年
共同相続人による遺産分割をしない旨の契約、または家庭裁判所に分割禁止の期間は、5年以内の原則とし、更新する場合であっても10年を超えることはできません。
旧法では、「5年を超える期間を定めて遺産の分割を禁止することができない」とだけ規定があり、5年間の更新をすることは認められておりましたが、今回の改正により、相続開始の時から10年以降は更新不可になった。という改正論点です。
実務でも非常に大きな改正となりました。おさえておきましょう。
今回はここまでです。