スクショは著作権侵害か?

投稿日:2022年2月19日 更新日:

Tweetのスクショは著作権侵害に当たるか?

作成者他人のツイートのスクリーンショットを投稿することは、著作権侵害に当たるか?

そんな判決が昨年12月、東京地裁で下されました。ツイッターでよく見かける引用ツイートの手法だけに、多くのユーザーに影響があると考えられます。

※スクリーンショットとは

画面に表示されている内容を画像ファイルとして保存したもので、画面を写真に撮った様にそのまま保存する事ができます。

 

 

 

この判断は、原告であるX氏が、NTTドコモを相手取り、ツイッター上で著作権侵害があったとして、ユーザー2人(A氏とB氏)について発信者情報の開示請求の裁判中で示されました。

A氏とB氏は昨年3月、X氏のツイートのスクリーンショットを添付したツイート(スクショツイート)をおこなっていました。

 

  • 原告「ツイートは言語の著作物」

判決によると、注目すべき争点は2つです。

 

  • 「X氏のツイートに著作物性があるか」

 

  • 「X氏のツイートのスクリーンショットを添付したツイートは、著作権法上で許されている引用に当たるか」です。

X氏は4つのツイートについて、「自分が有する思想と感想を創作的に表現したものであり、文芸の範囲に属する言語の著作物に当たる」などと主張しました。

 

これに対し、被告側はこれらのツイートについて、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条1項1号)に該当するかどうかは疑義がある」と反論。

裁判所はX氏のツイートについて、いずれも「原告の思想又は感情を創作的に表現したもの」と認め、著作権法10条1号が定める「小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物」であると判決で述べました。

 

  • 被告は「批評を加えるための引用」と反論

X氏のツイートが著作物であると認定したうえで、次に、X氏のツイートの画像が添付された被告A氏やB氏のツイートが「引用に当たるか」という点については、どう判断されたのでしょうか。

引用については、著作権法32条1項で次のように定められています。

「公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない」

 

 

 

被告側はこれに基づき、「X氏の意見に対して批評を加えるためにツイートを引用する形でおこなわれている」と反論しました。また、被告側は画像から出どころは明らかであるとして、引用の要件を満たしているとしました。

一方、X氏は「画像自体から明らかであるのは、原告のツイッターアカウントにすぎない。そして、原告各投稿は、いずれも既に削除されており、URLが明示されていない限り、決して原典には到達できないことからすれば、原告のツイッターアカウントの表示だけでは出所が明示されたことにはならない」と主張して、真っ向から対立していました。

 

 

裁判所の判旨は次のとおりです。

「ツイッターの規約は、ツイッター上のコンテンツの複製、修正、これに基づく二次的著作物の作成、配信等をする場合には、ツイッターが提供するインターフェース及び手順を使用しなければならない旨規定し、ツイッターは、他人のコンテンツを引用する手順として、引用ツイートという方法を設けていることが認められる。そうすると、本件各投稿は、上記規約の規定にかかわらず、上記手順を使用することなく、スクリーンショットの方法で原告各投稿を複製した上ツイッターに掲載していることが認められる。そのため、本件各投稿は、上記規約に違反するものと認めるのが相当であり、本件各投稿において原告各投稿を引用して利用することが、公正な慣行に合致するものと認めることはできない」

 

そのうえで、A氏やB氏のツイートは、X氏のツイートのスクリーンショットと比べ、「スクリーンショット画像が量的にも質的にも、明らかに主たる部分を構成するといえるから、これを引用することが、引用の目的上正当な範囲内であると認めることもできない」として、引用であることを認めませんでした。

裁判所はこうした判断から、NTTドコモに対して、発信者情報を開示するよう命じました。

しかし、今回の裁判所の判断は、規約違反や、著作権法の違反等、を分けて考えなくてはいけない。専門家の方々は今回の判決を様々な角度から見ています。なかなか深掘りすると難しい論点であるので、今回はここまでとしておきましょう。

 

昨今TwitterやSNSでの誹謗中傷が社会問題となっていますが、なかなか法律で規制するには線引きの難しさもあり、時間がかかっているようです。

こういった判例の積み重ねにより、規約や公正な慣行というものに話は進んでいくのかもしれません。

ただし、今回の裁判所の判断の様に、結果的にはリツイートもスクショも酷似しているものではありますが、認められた手法とは別の方法で表現する行為は弊害がついて回ります。今回の様にツイートした本人がそれを削除すればリツイートは消えますが、スクショは残ります。過去の誤った表現も悪意ある第三者に「現在の表現」として半永久的に擦り続けられるのです。

「公正な慣行に合致するもの」とは意外とシンプルな道徳なのではないでしょうか。

こんかいはここまでです。

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