懲役刑と禁固刑の一元化

投稿日:2022年1月30日 更新日:

法務省が懲役刑と禁固刑の両刑を一元化し「抗禁刑」を創設する為、刑法などを改正する関連法案を来年の通常国会に提出する方針を固めたそうです。まだ可決し改正が決まったわけではありませんが、どういった改正法案なのかいち早く見ていきたいと思います。

 

懲役刑と禁固刑の違いとは?

法律を破り、罪を犯してしまった場合、懲役、禁固、罰金などの刑が犯される場合があります。

 

懲役刑

受刑者を刑事施設内で拘置し、工場などで所定の作業を行わせる刑をいいます。(刑法1条)

 

禁固刑

禁固(禁錮)とは、受刑者を刑事施設(監獄)に拘置する刑をいいます。(刑法13条)

 

 

一般的に懲役の方が禁錮より罪が重く、禁固にはこれがありません。

 

歴史的沿革からして、禁固は政治犯等を対象とする刑であり、(最近では交通事故を起こした危険運転致死傷で禁固刑を言い渡された事件もありました)名誉拘禁的な性格があることから、規則的労働を強制されることがないとされています。

また、親族等との面会や文書の閲覧についても懲役刑と、禁固刑については特に変わりはありません。

 

見ての通り、違いは所定の作業をするかしないかです。懲役には労働の義務がありますが、金庫にはこれがありません。

 

 

執行猶予

執行猶予とは、有罪判決に基づく刑の執行を一定期間猶予し、その間に刑に服さないことを条件として刑罰権を消滅させる制度です。

初回の執行猶予(刑法25条1項)判決の要件としては、3年以下の懲役若しくは禁固又は50万円以下の罰金の言い渡しを受けた場合とされており、また再度の執行猶予判決の要件としては1年以下の懲役又は禁固の言い渡しを受けたことが要件とされており、これら意味では懲役も禁固も異なるところがありません。

ちなみに、再度の執行猶予の場合では、保護観察は必要的になります(刑法25条の2)。

「拘禁刑」の創設経緯

今回の改正案がなぜ議論となるかについて法務省はこう示しています。

近年作業の実施が困難な高齢受刑者が増加。若年受刑者も含め、作業時間の確保に縛られ、再犯防止に向けた教育プログラムや指導を受ける時間が限られてしまうとの課題も指摘されるようになった。

一方、作業が義務づけられていない禁錮で入所する受刑者も、「何もせずに過ごすのはかえって苦痛だ」といった理由から、約8割は自ら希望して作業をしている。24日に公表された今年の犯罪白書によると、昨年入所した受刑者の99・7%(1万6562人)が懲役だったのに対し、禁錮は0・3%(53人)と少ないこともあり、禁錮を刑罰として維持する必要性は薄れていた。

こうした現状から3年余りの議論を経て新たな刑を創設する要項を決定しました。

 

 

拘禁刑の創設に伴い、懲役・禁錮の規定が明記されている全ての法律も改正される見通しです。自治体の条例も変更する必要が生じるため、施行には成立後3~5年程度の準備期間が設けられるそうなので、まだしばらく先の話かもしれません。

 

同省は、拘禁刑を科された受刑者を更生させるため、実際にどのような処遇を行うかの検討もこれから進めることになりそうです。

 

 

今回はここまでです。まだ先の話ですが、法案が可決したときに詳しくご紹介できたらと思います。

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