自然排水受任義務と新設規定について。
今回も相隣関係についてです。「自然排水義務」についてと、新設された規定である「継続的給付を受けるための設備の設置権等」について今回は解説していきたいと思います。早速見ていきましょう。
自然排水受任義務
第214条
土地の所有者は、隣地から水が自然に流れて来るのを妨げてはならない。
第215条
水流が天災その他避けることのできない事変により低地において閉塞したときは、高地の所有者は、自己の費用で、水流の障害を除去するため必要な工事をすることができる。
第216条
他の土地に貯水、排水又は引水のために設けられた工作物の破壊又は閉塞により、自己の土地に損害が及び、又は及ぶおそれがある場合には、その土地の所有者は、当該他の土地の所有者に、工作物の修繕若しくは障害の除去をさせ、又は必要があるときは予防工事をさせることができる。
第217条
前二条の場合において、費用の負担について別段の慣習があるときは、その慣習に従う。
第218条
土地の所有者は、直接に雨水を隣地に注ぐ構造の屋根その他の工作物を設けてはならない。
上記のように民法では近隣において雨や水害の時の規定を条文としています。読んでそのままの条文であり、解説の必要はなさそうですね。。
次にいきましょう。
「継続的給付を受けるための設備の設置義務」
本日のメインはこちらです。今回の民法改正の相隣関係部門の改正二つ目となります。
令和5〜6年施行予定?
継続的給付を受けるための設備の設置義務
- 土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付(以下この項及び次条第1項において「継続的給付」という。)を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる。
- 前項の場合には、設備の設置又は使用の場所及び方法は、他の土地又は他人が所有する設備(次項において「他の土地等」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
- 第1項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用する者は、あらかじめ、その目的、場所及び方法を他の土地等の所有者及び他の土地を現に使用している者に通知しなければならない。
- 第1項の規定による権利を有する者は、同項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用するために当該他の土地又は当該他人が所有する設備がある土地を使用することができる。この場合においては、第209条第1項ただし書及び第2項から第4項までの規定を準用する。
- 第1項の規定により他の土地に設備を設置する者は、その土地の損害(前項において準用する第209条第4項に規定する損害を除く。)に対して償金を支払わなければならない。ただし、1年ごとにその償金を支払うことができる。
- 第1項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その設備の使用を開始するために生じた損害に対して償金を支払わなければならない。
- 第1項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、その設置、改築、修繕及び維持に要する費用を負担しなければならない。
改正の背景
他人の土地や設備を使用しなければ各種ライフラインを引き込むことができない土地の所有者は、解釈上現行の相隣関係規定等類推適用により、他人の土地への設備の設置や他人の設備の使用をすることができると解されています。しかし、明文の規定がない為、設備の設置使用に応じてもらえない場合や、所有者が所在不明である時などには対応が困難であるといった問題点があります。また権利を行使する際の事前の通知の要否などのルールが不明確でした。更に設備の使用などに伴う賞金の支払義務の有無などのルールも不明確であった為、不当な承諾料を求められるケースも多かった事などの事情から今回の改正となりました。
1項は設備設置義務の明確化です。
ガスまたは水道水の供給その他これらに類する継続的給付を受けることができない土地の所有者は、必要な範囲内で他の土地に設備を設置する権利を有する事を明文化しました。これには電話やインターネット等の電気通信などが含まれます。昨今の携帯電話(インターネット)の普及などからこういった法律が必要になってきている事でしょう。
2項は、場所や方法の限定です。
設備の設置使用の場所方法は他の土地及び他人の設備の為に損害が最も少ないものに限定されます。
3項は事前通知の規律の整備です。条文のままといったとこでしょう。
4、5項は償金の支払い費用の負担についてです。
土地の所有者は他の土地に設備を設置する際に損害が生じた場合には、賞金を支払う必要があります。損害には①一時的に生じる損害、②継続的に生じる損害の二種類があり、償金の支払方法がそれぞれ異なります。
6項は他人が所有する設備の使用権です。
土地の所有者はその設備の使用開始の際に、損害が生じた場合には償金を支払う必要があります例えば設備工事の際に、一時的に設備を使用停止したとした事に伴って損害が生じるようなことが考えられます。商品は一括払いが想定されています。
7項は他人が所有する設備の使用権です。
土地の所有者はその利益を受ける割合に応じて、設備の修繕・維持等の費用を負担します。
以上今回は長くなってしまいましたが相隣関係改正部分でした。
また次回もご覧ください。