民法等の見直し

投稿日:2022年4月1日 更新日:

相隣関係について①

 

今回はまだ先の話ではありますが約2年後であるとされている民法物権の改正についてです。

相続登記の義務化などに伴い、様々な改正がされますが、今回は相隣関係についてです。

近隣の住民とのトラブルについて民法では本当にざっくりとですが、規定しています。現在の民法と再来年に変わるであろう改正法とを今回は見比べていきたいと思います。

それでは早速見ていきましょう。

相隣関係とは?

相隣関係(そうりんかんけい) とは、隣接する不動産の所有者間において、通行・流水・排水・境界などの問題に関して相互の土地の利用を円滑にするために、各自の不動産の機能を制限し調整し合う関係のことを相隣関係と呼びます。

具体的にはどんな条文があるのか見ていきたいと思います。

 

民法209条

土地の所有者は、境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる。
ただし、隣人の承諾がなければ、その住家に立ち入ることはできない。

前項の場合において、隣人が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。

この条文の通り旧法では、家の工事をするために隣の土地に立ち入ることを請求することができる。とされていました。

「請求することができる」では承諾が得られなかったり、所在が不明な場合には承諾に代わる判決を得なくてはならなかったこと等が不便とされていたことや民法の相隣関係規定は、明治29年に民法が制定されて以来、実質的な見直しがされておらず立法時から大きく変化した社会経済情勢に合わすために見直しをする必要があるものと長い間考えられていました。

例えば電気ガス水道等の引き込みの工事の際、隣地を使用する必要が生じる場合や、境界線の確定に関し土地の境界票等の調査のために隣地に立ち入る場合などにおいて隣地所有者が行方不明者である場合、その状況に対応する場合に困難が生じることは少なくないといった指摘があることから改正の必要がある。とされた経緯があるようです。

 

改正後の209

そこで、改正後は、

  • 土地の所有者の権利が隣地の使用請求権から使用権に改められた。
  • 隣地の使用目的が拡張された。
  • 隣地の所有者等の損害が最少となるように使用の日時、場所及び方法を選ぶべき義務が課せられた。
  • 隣地の所有者等に対する通知義務が課せられた。

 

この様な実務的な改正が昨年4月に可決しました。

(前述した様に約2年後に施行されるとみられています)

 

囲繞地通行権

囲繞地通行権には今回改正はありませんが、民法の相隣関係において重要な規定となっているためざっくりご紹介します。

民法210条

  1. 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。
  2. 池沼、河川、水路若しくは海を通らなければ公道に至ることができないとき、又は崖があって土地と公道とに著しい高低差があるときも、前項と同様とする。

民法211条

  1. 前条の場合には、通行の場所及び方法は、同条の規定による通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
  2. 前条の規定による通行権を有する者は、必要があるときは、通路を開設することができる。

 

条文を読んでわかる様に囲繞地通行権とは、(いにょうちつうこうけん)とは、ある所有者の土地が、他の所有者の土地又は海岸や・崖地等に囲まれて(この状態を囲繞と呼びます。)公道に接していない場合に、囲まれている土地の所有者が公道まで他の土地を通行する権利の事をいいます。

これは当事者の契約などによって生じる地役権(過去の当記事をご参照下さい。)と違い法律上当然に発生する権利です。他人の土地を通らなければ外出できない土地であっては誰も住むことはもちろん、使用収益するはできないので当然と言えば当然といった権利ではあります。

 

今回はここまでです。次回も引き続き民法の相隣関係を見ていこうと思います。

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