所有者不明土地等④

投稿日:2022年5月28日 更新日:

管理不全土地管理命令 (前編)

 

今回も所有者不明土地等についてです。前回は所有者不明土地管理命令を細かくやりました。今回は2つ目の新たな規定である「管理不全土地管理命令」についてです。当ブログでも前々回から簡単に触れておりますが、今回は細かく見ていきたいと思います。(※1から見て頂くと理解が深まりますのでおススメです。)

管理不全土地管理命令とは?

少しだけおさらいになりますが、①所有者不明土地管理命令とは

所有者が不明となっている土地または建物について、管理人を選任し管理人による管理を行うことを可能とする制度が新設され多制度です。

それに対して今回の②管理不全土地管理命令とは、所有者が判明しているが、適切に管理されていない土地又は建物について管理人を選任し、管理人による管理を行うことを可能とする制度です。

 

この制度の背景には、土地建物の所有者が判明していても、連絡が付かず管理されることなく放置され、周囲に悪影響を及ぼす自体が存在します。

旧法では、土地建物が適切に管理されていないことによって、他人の権利が侵害される場合、物権的請求権や人格権に基づき、所有者に対して是正を求めることができますが、所有者が遠隔の地に居住しているなどの場合、土地建物の継続的な管理を求めることは難しく、また、あらかじめ是正措置のの内容を確定することが困難であることが想定されますし、訴訟手続きをすることも困難を極めます。

そのような問題等を解決する為、管理人による管理を可能とする今回の制度が創設されました。

 

以下が条文となります。

 

(管理不全土地管理命令)

第264条の9

1  裁判所は、所有者による土地の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、当該土地を対象として、管理不全土地管理人(第3項に規定する管理不全土地管理人をいう。以下同じ。)による管理を命ずる処分(以下「管理不全土地管理命令」という。)をすることができる。

2  管理不全土地管理命令の効力は、当該管理不全土地管理命令の対象とされた土地にある動産(当該管理不全土地管理命令の対象とされた土地の所有者又はその共有持分を有する者が所有するものに限る。)に及ぶ。

3  裁判所は、管理不全土地管理命令をする場合には、当該管理不全土地管理命令において、管理不全土地管理人を選任しなければならない。

 

1項は既に見ましたが、要件である「管理が不適当である時」とは、どんな場合でしょうか?

「管理が不適当であること」について

管理が不適当である事に該当しうる場面としては、管理をまったくしていないケースのほか、管理をしているものの、それが適切ではないケースが想定されます。管理が不適当である事に該当するか否かの判断に当たっては、

  • 所有者が実際に当該土地または建物を利用しているのか否か含む使用形態。 ②所有者の意見が重要な考慮要素となるとされる

そのため、管理命令の申し立てがあった際、陳述聴取の手続きが取られることになります。これが所有者不明土地管理制度における手続きとの大きな違いといえます。

なお、もう一つ大きな違いは、所有者不明土地管理命令または、所有者不明建物管理命令の手続きと異なり、広告や登記の嘱託は想定されていません。

 

今回はここまでとします。(後編に続く。)

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