前回(https://kubohiro.com/archives/218)に引き続き、今回も保証についてです。今回は2020年改正点を重点的に見ていきます。
保証債務の消滅時効
債権者Aは、個人である債務者Bに100万円を貸し付けた。C株式会社は、BのAに対する貸金債務について保証した。Bは分割し、弁済を続けていたがある日弁済が滞ってしまい、最後に弁済した時から5年間が経過した。この場合、Bの貸金債務、C株式会社の保証債務はどうなるか?
まずは、改正前の民法を確認しましょう。
改正前民法では、債権の消滅時効は権利を行使する事ができる時から10年間と定めていました。
この点、改正民法では
- 「権利を行使する事ができる事を知った時」(主観的起算点)から5年間
- 「権利を行使する事ができる時」(客観的起算点)から10年
と改正されました。
C 株式会社の保証債務とBの主債務は別個の債務ですので、別々に消滅時効にかかります。更に商事消滅時効(商行為の特則)も廃止された為、権利を行使する事ができる時から10年、権利を行使する事ができる事を知った時から5年に統一されました。
本問では弁済を滞った日は明白であることから、どちらの消滅時効も、権利を行使する事ができる事を知った時から5年の短期消滅時効が適用されます。
求償について。
委託を受けた保証人の求償権
事例①
主債務者Aに頼まれ、3000万の融資を受けることについて、Bが保証人となった。主債務者は400万を返した後に主債務者が資力を無くした。そこで保証人が2500万の不動産を処分し保証を履行した。債権者は残りの100万は免責を得た。この時にBはAにいくら求償できるか?
この場合、以前までの民法であれば、「自己の財産を持って債務を消滅させた保証人は主たる債務者に対して求償権を有する」とされていた。そこで今回の問題の部分にある免責を受けた部分においては明確ではありませんでしたが、改正民法ではここを明確にしました。
第459条
- 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務者に代わって弁済その他自己の財産をもって債務を消滅させる行為(以下「債務の消滅行為」という。)をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対し、そのために支出した財産の額(その財産の額がその債務の消滅行為によって消滅した主たる債務の額を超える場合にあっては、その消滅した額)の求償権を有する。
したがって、改正民法では求償できる範囲が明確になり、上記の設問では債務消滅のために支出した財産の価額すなわち2500万円について求償することができます。
事例②
Aの主債務3000万円について、委託を受けた保証人Bが弁済期より1ヶ月早く弁済した場合、Bは、主債務Aに弁済した全額について、求償できるか。
主債務者Aが、債権者に対する1500万円の債権を第三者から譲渡を受け、弁済期の1週間前にその債権の弁済期が到来するため、相殺をするつもりでいた場合はどうか?
この問も、事例1と同様改正前の民法では規定のなかった「どのような条件で求償できるか」部分を明確にしました。
第459条の2
- 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務の弁済期前に債務の消滅行為をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対し、主たる債務者がその当時利益を受けた限度において求償権を有する。この場合において、主たる債務者が債務の消滅行為の日以前に相殺の原因を有していたことを主張するときは、保証人は、債権者に対し、その相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。
つまり、委託ある保証人は、主債務者に対して弁済した当時からの利息なども主債務者に対して求償することができますが、主債務者が相殺することができた時は、債権者から取り戻さなくてはならなくなる。と言う意味です。
これに対して委託を受けない保証人の場合には、債務者の意思に反する保証人なのか、意思に反しない保証人なのかでまた分かれることとなる。
保証についてはかなり多くの改正があるため何回かに渡りお話ししたいと思っております。
今回はここまでです。