相続人の廃除とは?

投稿日:2022年3月3日 更新日:

相続人の廃除とは?

相続人の廃除とは?

前回に引き続き、今回も相続に関しての問題点です。相続人の視点、被相続人の視点と二つの視点で見て頂くと理解も深まることかと存じます。前回ご紹介した「相続欠格」との違いにもご注目ください。前回の記事はこちらから↓

URL : https://kubohiro.com/archives/213

被相続人(亡くなった方)が特定の相続人を廃除すると、

その相続人は遺産を相続することができなくなります。

 

相続人の廃除とは、相続人から虐待を受けたり、重大な侮辱を受けたりしたとき、またはその他の著しい非行が相続人にあったときに、被相続人が家庭裁判所に請求して虐待などした相続人の地位を奪うことをいいます。

 

廃除の意義

被相続人が推定相続人に相続させる事を欲しない時、家庭裁判所に請求してその者の相続権を奪う制度。

 

廃除の要件

 

被相続人に対する虐待や重大な侮辱がある場合

推定相続人にその他の著しい非行がある場合(民法892条)

まず、「虐待」とは暴力や耐え難い精神的な苦痛を与える行為を、「重大な侮辱」とは名誉や感情を害する行為を意味します。
「著しい非行」とは、虐待や重大な侮辱という行為には該当しないものの、それに類する程度の不義を意味します。
たとえば、犯罪、遺棄、被相続人の財産の浪費や無断処分、不貞行為、素行不良などが挙げられます。
いずれにおいても、単なる不仲というだけでは足りず、客観的に見て、遺留分をはく奪されてもやむを得ないといえるかどうかが基準です。
廃除には一切の相続権を失わせるという重大な効果があるため、認められるハードルは低くありません。
たとえば、単に親子喧嘩でつい手が出てしまったという程度では認められない可能性が高いでしょう。

以下の様な判例があります。

虐待による廃除を認めた判例

Yは、Xが所有する土地上にビル建築を希望しましがXに反対されたことから、YはXに魔法瓶、醤油瓶を投げつけ、玄関のガラスを割ったうえ、灯油をまいて放火すると脅迫した。

重大な侮辱による廃除を認めた判例

長男Yは、その経営する飲食店の開業・運転資金を父Xに援助してもらっていたにもかかわらず、近所で一人暮らしをするXの老後の面倒を見なかった。そればかりか「早く死ね。80歳まで生きれば十分だ」などと罵倒したうえ、お湯のはいったヤカンを投げつけて負傷させた。

こう見てみると、なかなかのケースでない限り廃除は認められない様にも思えます。

 

廃除の手続き

  • 生前廃除

⇨被相続人が、家庭裁判所に請求をする。

 

  • 遺言廃除

⇨遺言執行者が、遺言の効力発生後遅滞なく、家庭裁判所に廃除の請求をする。

 

この様に、二つのパターンで相続人を廃除します。相続から廃除されるとその者の相続分は当然ですがなくなります。しかし受遺能力は失いません。この点は、前回紹介した相続欠格との相違点となります。他にも相続欠格との違いを見てみましょう。

 

相続欠格と廃除の違い

  • 相続の廃除は遺留分を有する者に対してのみすることができます。つまり遺留分を有しない兄弟姉妹に相続人の廃除の請求をすることはできません。
  • 前述のとおり、受遺能力は失われません。(廃除をした後でもその者に遺贈することができる)
  • 相続欠格は法律上当然に発生しますが、廃除は家庭裁判所に廃除の請求をしなくてはいけません。虐待を受けたからといってそのまま放っておけばその者は相続人として扱われるわけです。
  • 相続欠格は一度欠格事由に該当するともう相続権を失いますが、廃除は取り消しの請求をすることができます。

 

この様に相続人から相続権を奪うという点において、非常によく似ている制度ではありますが、違いが理解いただけたかと思います。相続、親族のお悩みは専門家にご相談ください。

 

 

今回はここまでです。

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