登記義務者の所在が知れない場合の一定の登記の抹消手続きの簡略化

投稿日:2022年8月24日 更新日:

【後編】

今回も引き続き、登記義務者の所在が知れない場合の登記の抹消方法の改正となります。こちらは後編となっておりますので、前回の記事と併せてお読みください。早速、新条文から見ていきたいと思います。

 

(除権決定による登記の抹消等)

不動産登記法第70条2項(新設)

前項の登記が地上権、永小作権、質権、賃借権もしくは採石権に関する登記、または買戻しの特約に関する登記であり、かつ、登記された存続期間または買戻しの期間が満了している場合において、相当の調査が行われたと認めるものとして法務省令で定める方法により調査を行ってもなお共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在が判明しないときは、そのものの所在が知れないものとみなして、同項の規定を適用する。

上記赤文字はは新設された条文です。

 

2項新設 公示催告の申し立てがし易くなった

 

今回の改正により、1項に定める「共同して登記の抹消申請すべき物の所在が知れない」場合に直接該当しなくても、

  • 登記された存続期間等が満了していること。 
  • 相当の調査が行われたと認められるものとして法務省令で定める方法により調査を行ってもなお共同して登記の抹消の申請をするべき者の所在が判明しないことの要件を満たす場合

上記二つの場合に、「共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在が知れない者」と、みなすこととしました。

 

※因みに1項の規定は

共同して登記の抹消をしなくてはならない場合でも、行方不明により共同して申請できない場合には、公示催告の申し立てをし、除権決定を得て単独で抹消できる。

と、いう規定です。1項には改正点はありません。

 

除権決定とは?

公示催告を経て、裁判所が行う裁判である申立てにかかる権利の失効の効力を有する決定のことです。

 

司法書士が職務として関わるか?

司法書士には公示催告の申立てに関する代理権がないため裁判所提出書類の作成義務として携わる必要があります。

解散した法人の担保権に関する登記の抹消手続の簡略化

(解散した法人の担保権に関する登記の抹消)

第70条の2

登記権利者は、共同して登記の抹消の申請をするべき法人が解散し、前条第2項に規定する方法により調査を行ってもなおその法人の清算の所在が判明しない為、その法人と共同して先取特権、質権、又は、抵当権に関する登記の抹消申請することが出来ない場合において、被担保債権の弁済期から30年を経過し、かつ、その法人の解散の日から30年を経過したときは、第60条の規定に関わらず、単独で当該登記の抹消を申請することができる。

 

「法人の清算人の所在が判明しない」が要件となっている具体的調査方法は?

法人に対しても同様に担保権の単独抹消登記が可能です。

自然人との違いは「清算人の所在が判明しない。」というところです。

 

清算人の所在についての具体的な調査方法としては、商業登記記録上の清算人の住所における住民票の登録の有無や、その住所本籍地とする戸籍や戸籍の附票の意味その住所に宛てた郵便物の到達の有無等を調査し、転居先が判明するのであればこれを追跡して調査すれば足り、商業登記記録上の住所地の周辺での聞き取り調査のような現地調査までは求めないことが想定されています。

 

今回はここまでです。

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