所有者不明財産
昨今、所在者不明不動産については度々報道において目にする機会が増え、深刻な社会問題化しております。今回は管理するものがいない不動産についての新たな規定を見ていきたいと思います。
当ブログでは何度か「相続登記の義務化について」などで触れましたが、今回はまた新たに明確になった部分や新たに分かってきた箇所を掘り下げてご紹介していきたいと思っております。それでは見ていきたいと思います。
問題点
相続登記がされないこと等により、以下の状態 と な っ て い る 土 地 を「 所 有 者 不 明 土 地 」と い い ま す 。
❶不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地
❷所有者が判明しても、その所在が不明で連絡が付かない土地
所在者不明土地が増えていることについてどのような問題が起きているのか?
土地の所有者の探索に多くの時間と費用が必要となります。
公共事業や復旧 ・ 復興事業が 円滑に進まず、 取引や土地の活用の阻害要因となったり、土地が管理されず、放置され隣接する土地への悪い影響が発生したりするなど、 様々な問題が生じています。
そして、全国のうち所有者不明土地が占める割合は九州本島の大きさに匹敵するともいわれています。今後、高齢化の進展による死亡者数の増加等により、 ますます深刻化するおそれがあり、その解決は喫緊の課題とされています。
旧法条の問題
旧法における「不在者財産管理人・相続財産管理人」は、人単位で財産全般を管理する必要があり、非効率になりがちでした。
例えば特定の財産にのみ利害関係を有する者のの申し立てにより、財産管理人が選任された場合であっても、財産全般を管理することを前提とした人件費、や費用等の負担を強いられ、問題の処理にも多くの時間を費やします。また、所有者が判明していても、管理がされないことにより危険な状態になることもあります。
創設された二つの制度
そこで今回二つの制度が創設されました。
❶ 所有者不明土地・建物の管理制度
❷ 管理不全土地・建物の管理制度
❶は所有者不明土地・建物の管理を効率化、合理化する為、個々の所有者不明土地・建物の管理に特化した新たな財産管理制度です。
これは、調査を尽くしても所有者やその所在を知ることができない土地や建物について、利害関係人が地方裁判所に申し立てることによって、 その土地・建物の管理を行う管理人を選任してもらうことができるようになります。
❷の制度は、管理の不全化した土地・建物の適切な管理が可能となるように、所有者が土地建物を管理せずこれを放置している事で、他人の権利が侵害される恐れがある場合に管理人の選任を可能にする制度です。
これは、管理が不全である状態の土地や建物の管理制度で、所有者による管理が不適当であることによって、他人の権利・ 法的利益が侵害され又はそのおそれがある土地・建物について、 利害関係人が地方裁判所に申し立てることによって、その土地・建物の管理を行う管理人を選任してもらうことができるようになりました。
二つの制度の違い
この制度の大きな違いをおさえておきます。
❶ 所有者不明の管理制度
❷ 管理不全の管理制度
要件は?
❶は所有者が行方不明であること。
❷は行方不明は要件ではない。
管理命令を発令する前に所有者の意見を聞くか?
❶は聞かない。(そもそも所在が不明)
❷ 聞く。
対象不動産の管理処分権は管理人に専属するか?
❶管理人に専属する。
❷専属しない。
登記が必要か?
❶登記が必要。(嘱託される)
❷登記されない。
と、このような新たな制度が新設され、所在者不明土地の増加を抑えることができるのでしょうか?
次回はもう少しこの二つの制度を細かく見ていきたいと思います。
今回はここまでです。