新しい組織再編の制度、「株式交付」について

投稿日:2021年11月5日 更新日:

株式の交付

今回は新しい組織再編の制度、「株式交付」について解説していきたいと思います。

 

株式交付とは

この制度は、完全子会社とすることを予定せずとも現金を使わずに自社の株式を対価として会社を子会社化することが可能であり、かつ、既存の自社株を対価とするM&Aの手法ほど手続が複雑でなくコストもかからないという点で、新たなM&Aの手法として活用されることが期待されています。

そのため、株式交付制度は、新型コロナウイルス感染症の影響により経済の先行きが不透明な状況であっても積極的にM&Aに乗り出すことを検討することを可能にする制度であると考えます。

これは令和3年会社法改正によって新設されました。

 

株式交付とは、株式会社(A社)が他の株式会社(B社)をその子会社(50%超の議決権を所有するものに限る)とするために、B社の株式をB社の株主から譲り受け、その対価としてA社の株式を交付するものです

A社がA社の株式を対価とする手法により円滑にB社をその子会社とすることが出来るようにするために、募集株式の発行手続によらずB社の株式の譲渡人に対してB社の株式を交付することが出来ます。

なお、A社は、B社の株式を譲り受けるのに際し、A社の株式に加えてA社の株式以外の金銭等を交付することができますし譲り受けるB社の株式と併せてB社の新株予約権等を譲り受けることもできます。

株式交換による方法

株式交付と類似する改正前から存在する制度として、株式交換があります。

株式交換も、B社を子会社化しようとするA社が、A社の株式を対価としてB社を子会社化しようとする場合に用いられます。

しかし株式交換の場合、A社がB社の発行済み株式の全てを取得することとされているため、A社がB社を完全子会社化せずに、子会社化する場合には、株式交換を用いることはできません

※完全子会社とは100%の株主となる事です。

現物出資による方法

もう一つ、改正前から存在するA社がA社の株式を対価としてB社を子会社とする手法として、B社の株式を現物出資資産としてA社の株式を募集するという方法もあります。

しかし現物出資の場合、以下の手続上のハードルがあります。

  • 原則として検査役による現物出資財産の価額の調査が必要となり、その調査に一定の期間を要します。

②現物出資財産の価額が募集事項として定めた価額に著しく不足する場合、A社の株式を引き受けたB社の株主や現物出資に関与したA社の取締役等がA社に対し不足額を填補する責任を負わなければなりません。

③払込金額が募集株式を引き受けるB社株主にとって特に有利な金額の場合、A社株主総会において特別決議の承認が必要となることに加え、A社取締役が当該株主総会においてその払込金額で募集をすることを必要とする理由を説明しなければなりません。

 

と、現物出資の手続きによる子会社化にはかなりのハードルが存在します。そこで検査役の調査等もせずに子会社化できるメリットが今回新設された株主交付にはあるのです。

 

今後、M&Aを促進させ特に地方に留まらず、中小企業にもこういった動きが見られていく事となるでしょう。

本日は以上です。

有り難うございました。

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