今回は令和3年3月1日から施行される制度の創設について紹介していきたいと思います。
前回、株式会社の設立についてはご紹介しましたが、株式会社を設立すると、一年に一度必ず株主総会が必要となってきます。
仮に株主が一人であっても、これを株主総会議事録として書面、または電磁的記録において記録し、10年間は本店に(支店に5年)保存しておかなくてはなりません。
今回はこの株主総会を開く為に必要な招集手続き及び議会において決定する事項の案内を株主に送る為のルールについて簡単にご説明します。
株主の招集
株主総会を開く為には株主に招集通知を送付しなくてはなりません。
公開会社においては二週間前までに、公開会社でない会社(ここでは非公開会社と呼びます)では1週間以内にこれを送付しなくてはなりません。
ただし非公開会社である取締役会設置会社においては1週間。取締役会を置いていない時には定款に定めることによってよって1週間より短い期間で招集することができます。
基本的には株主総会は会社の用意した会場などに株主が集まって開催されます。
ですが、書面やインターネットによって決議に賛成反対の議決権を行使する際には、上記の短縮することができる規定は適用されず一律、二週間前までにはこの決議する内容を記した書面、又はメール(参考資料)を株主に対して送付しなくてはいけませんでした。
今回の改正点(新設)
今回の改正はこの決議する内容を記した書面、メール(参考資料)を会社側は送らなくてもよくなりました。
これは会社側にとってはとても嬉しい規定です。
株主が2〜3人であれば心配に及びませんが1000人を超えれば紙代、切手代だけでも大きな費用となります。
昨今のインターネットの進歩、普及率に照らせばばこのような規定は時代遅れであると言っていいでしょう。
更に従来資料に目を通し議案を熟考する期間が2週間でありましたが、今回、3週間と早期に充実した内容を提供されることが期待されています。
そこで
- 会社は株主総会の日の3週間前までに情報を掲載する。
- 株主は会社のホームページにアクセスし資料を閲覧する。
- 株主が議決をインターネットで行使する(電子的方法により議決が行使できる定めがある会社の場合)
- (③で議決権を行使しない時)株主総会に出席し議決権を行使する。
なお、誤解のないようにしないといけないのが、「株主総会資料の電子提供制度」が実施された後も、その制度が適用される会社は、株主総会の招集の際、紙で送る書類が一切なくなる訳ではなく、招集通知は今後もすべての株主に対し、紙で送らないといけません。
(※現行法の下でも、株主が同意した場合には、紙に替えて電磁的方法で招集通知を送ることもできますがここでは割愛させて頂きます。)
つまり「株主総会資料の電子提供制度」と言う制度は、株主に対して提供する資料の完全オンライン化を実現する制度ではなく、招集通知のみは従来通り紙で送る必要があるということです。
もう一つ注意点として、今回の制度を会社側が利用する場合でも、株主が希望する場合には従来通り参考書類を書面で送付なくてはなりません。
ちょっとややこしいですが、会社にとっては経費が大幅に削減できる大きな改正となることでしょう。
社会がペーパーレス化していく中、現存する法律の中には無駄に紙や印鑑を強制する法律がまだまだ生き残っています。
こういったちょっとした事でも法律を改正するには国会を開き、議員さん達が慎重に検討する為、大きな時間がかかるので仕方のないことでしょう。
これからも少しづつ現代化されていく法律をまた紹介していきたいと思います。
おしまい。