相続財産の管理 後編
前回は相続財産の管理人が、相続財産の清算人と分かれた。ところまで見ていきました。前回の記事がまだの方は前回の記事と併せてご覧ください。今回は条文をもう少し細かく見ていきます。
1項本文 「必要性の要件」
もう一度897条を見てみましょう。
第897条の2
家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、いつでも、相続財産の管理人の選任その他の相続財産の保存に必要な処分を命ずることができる。ただし、相続人が一人である場合においてその相続人が相続の単純承認をしたとき、相続人が数人ある場合において遺産の全部の分割がされたとき、又は第952条第1項の規定により相続財産の清算人が選任されているときは、この限りでない。
今回は条文の中にある「必要性の要件」を見ていきます。
「相続財産の保存に必要な処分を命ずることができる」という文言は、処分を命ずる必要性が要件となっていることを前提としています。
この必要性は、相続財産に属する者について、相続人が保存行為をせずまたは相続人のあることが明らかでないために、その物理的状態や経済的価値を維持することが困難であると認められ相続人に代わって第三者に保存行為をさせる必要がある時は、この必要性の要件を満たしていることが想定されています。
例えば、相続財産に属する不動産が荒廃しつつあったり、物が腐敗しつつあったりする場合において、相続人が保存行為をせず、または相続人になることが明らかでないために、その物理的状態や、経済的価値を維持することが困難となってしまうような時に、相続人に代わって第三者に保存行為をさせる必要があるときなどが考えられます。
今紹介した制度ですが、但し書きにあるように、制度利用できない例外があります。
例外3つ
- 相続人が一人である場合においてその相続人が相続の単純承認をしたとき。
(その財産の帰属は確定しているから相続財産管理人による管理の必要性がないと考えられます。) - 相続人が数人ある場合において、遺産の全部の分割がされたとき。
(その財産の帰属は確定しているから相続財産管理人による管理の必要性がないと考えられます) - 民法952条第1項の規定により、相続財産の精算人が選任されているとき。
(新法に基づく管理人を選任できないものとしました)
管理人の権限
不在者財産管理人の職務、権限を定める民法27条から29条まで準用されているが、不在者財産管理人の権限を定める 民法第28条では
- 保存行為
- 管理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為を行う権限を有するものと定められています。これらの権限を越える行為をするときは家庭裁判所の許可を得ればすることができます。
今回はここまでです。
次回は相続放棄した者による管理についてご紹介します。