新生児取り違え事件

投稿日:2022年1月9日 更新日:

日本では、全国各地で、新生児の取り違え事件が起きており、1974年に行われた調査によると、1957年から1971年までの15年間で32件の取り違えが判明しています。もちろんこの数は判明した数で、実際には更に多いのではないでしょうか。
時間が経って取り違えが判明し、病院を相手取った裁判に発展したケースも起きており、2013年には、1953年に別の赤ちゃんと取り違えられた男性が病院を提訴し、3800万円の賠償金を得た裁判もありました。 https://gendai.ismedia.jp/articles/-/37752

取り違えが判明する多くのケースが血液型です。本来両親の血液型からは絶対に産まれ得ない血液型を子が有していた際、まず先に母の不貞行為を疑われるそうです。そこから母が身の潔白を証明し、病院に問い合わせ、事態が発覚することが多いようです。

早いうちに真の子ではない事に気がつき、本来の両親の元へ帰ることができれば良いのですが、昨今でもニュース等で取り上げられておりました方は、小学校入学の健康診断で血液型を知り、そのせいで夫婦関係はギクシャクし、両親は離婚。そのことを50代になり知った方でした。https://youtu.be/jIB2PCqlg7E

 

産んだ親が本当の親なのか。育てた親こそ親だ。とさまざまな意見がありますが、今回は民法の親族編に規定されている親子について、取り違えられてしまった子供がどの様な法的手段を行使できるのか。を見ていきたいと思います。

 

嫡出子とは

嫡出子とは、法律上婚姻した夫婦の間に生まれた子のことをいい、非嫡出子は未婚の男女の間に生まれた子のことを言います。
「未婚の男女」の関係として代表的なのは、不倫関係や事実婚(内縁関係)です。
嫡出子には当然認められている法律上の権利・地位(父親の相続権、父親の扶養義務など)が、非嫡出子には当然には認められていませんので、子にとって嫡出子・非嫡出子の違いは重要です。

今回分かりやすくする為、取り違えられてしまった子をAと仮定します。(満30歳男性A)は法律上嫡出子です。ただし、本来血の繋がった親との親子関係はありません。育ての親との親子関係を切り、血の繋がった親と法律上の親子になる事は可能なのでしょうか。

 

育ての親との縁を切る

よくテレビなどで「親と子の縁を切る」などと耳にしますが、法律上母親と子が縁を切る事はできませんが、父親には嫡出否認の訴えと、親子関係不存在の確認の訴えというものがあります。

・嫡出否認の訴え

(推定される嫡出子)

  • 妻が婚姻中に妊娠した子、または、②婚姻成立の日から200日経過後または婚姻の解消又は取り消しの日から300日以内に生まれた子は、その夫婦の間に生まれた子

であると推定されます。※(その期間外にに生まれた子は推定されない嫡出子)

 

子の親について、母親は分娩の事実から明かであるのに対し、父親が誰であるかは当然には判明しません。もっとも、婚姻中に妻が妊娠した子であれば、夫が父親である蓋然性が高いといえることから、このように推定されます。

この法律上の推定を覆すための手続きが、嫡出否認の訴えです。
嫡出否認の訴えは、嫡出推定により父と推定されている父親のみが提起できます。
また、嫡出否認の訴えは、子の出生を知ったときから1年以内に訴える必要があります

 

親子関係不存在確認の訴え

親子関係不存在確認の訴えとは、推定されない嫡出子や非嫡出子について、法律上の親子関係を争う、法律上の親子関係の不存在を確認するための裁判手続きをいいます。嫡出の推定が及ぶ嫡出子について、親子関係を争うためには、嫡出否認の訴えによるほかありません

親子関係不存在の確認の訴えには提訴期間がありません。しかし本ケースではAさんは推定される嫡出子ですのでそもそも親子関係不存在確認による事はできませんし、出生を知ってから、一年を経過しているので嫡出否認の訴えによることもできません。

 

よってAさんは30歳の為、特別養子縁組することもできない為、父と母と法律上の親子関係を切り離す事はできません。

 

それでは、未だ見ぬ血の繋がった両親に会うことができ、この両親と法律上の親子関係を得る事は可能なのでしょうか?

 

 

 

この続きをは次回にしたいと思います。

 

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