共有⑤ 相続財産に関する共有物の分割の特則

投稿日:2022年5月1日 更新日:

相続財産に関する共有物の分割の特則

今回も共有の改正についてです。今回は共有物の持分が相続されたときに起きる、遺産分割と、共有物の分割を一元化してできるようになった。といった改正です。早速見ていきましょう。

 

地方裁判所と家庭裁判所

今回は例題で見ていきたいと思います。

例えば、AとBが2分の1ずつ共有している不動産があります。

Aが亡くなり、Aの相続人はCとDでした。この時の不動産の持分はC1/4とD1/4、B2/1となります。AとBは古い友人で共に不動産の共有を望んでおりましたがその相続人(子供等)からすると赤の他人であったりします。

ここで例えばCとDでの遺産分割をし、Cの単有とする時の裁判所の管轄は家庭裁判所となります。

この後にBとCによるBを単有とする場合の裁判所は共有物分割となり、基本的には地方裁判所が管轄裁判所となります。

現在までは、このように一度で共有関係の解消をすることができませんでした。そこで今回の民法258条の2が新設されました。

 

 

令和3年改正民法第258条の2(未施行) 

 共有物の全部又はその持分が相続財産に属する場合において、共同相続人間で当該共有物の全部又はその持分について遺産の分割をすべきときは、当該共有物又はその持分について前条の規定による分割をすることができない。

2  共有物の持分が相続財産に属する場合において、相続開始の時から10年を経過したときは、前項の規定にかかわらず、相続財産に属する共有物の持分について前条の規定による分割をすることができる。ただし、当該共有物の持分について遺産の分割の請求があった場合において、相続人が当該共有物の持分について同条の規定による分割をすることに異議の申出をしたときは、この限りでない。

3  相続人が前項ただし書の申出をする場合には、当該申出は、当該相続人が前条第1項の規定による請求を受けた裁判所から当該請求があった旨の通知を受けた日から2箇月以内に当該裁判所にしなければならない。

 

 

1項はシンプルに判例の明文化です。

簡単ですが判例をご紹介します。

共同相続人は相続財産に属する特定の財産それぞれを共有しており、その共有の性質は民法第249条以下の共有と同じものであるがその法律関係の解消は、共有物分割の手続きではなく、遺産分割の手続きにより行うべきである(最高裁判例昭和62年9月4日民集151号645)

共有物について遺産分割前の遺産共有状態にある共有持分と他の共有持分とが併存する場合には、遺産共有持分と他の共有持分との間の共有関係を共有物分割の手続きにより解消した上で、遺産共有持分を有する者に分与された財産の共有関係を遺産分割の手続きにより解消するべきである(最高裁 判例平成25年11月29日日十67巻八号1736)

 

2項は共有物分割の手続きの中で遺産共有の状態を解消することを認める例外規定についてです。

これは先述したとおり相続開始の時から10年を経過したときは例外として相続財産に属する共有物の持分について、民法第258条の規定による分割をすることができるものとしました。

この時の要件は以下の通りです。

 

要件

❶共有物の持分が相続財産に属する場合であること。

これは先述した例のような状態と考えていただければわかりやすいでしょう。

❷相続開始の時から10年を経過

この要件は具体的相続分の主張に10年の期間制限を設けたこと(新民法904条の3)と関係しています。これは当該期間の経過後は、法定相続分の割合に応じて相続財産の分配を行うのであれば遺産の全体を把握する必要性がなくなるからです。

❸共有物分割をする事について相続人からの異議の申し出がないこと。

これは遺産分割を希望する共同相続人がいる可能性を考慮しその意思を尊重するために設けられた要件です。

 

3項の規定は、異議申出の期間制限です。(通知を受けた日から2ヶ月以内に)これは心理の安定を図る趣旨から、訴訟開始後早急に権利確定を図る狙いのためです。

 

今回はここまでです。

次回も引き続き共有の改正について見ていきます!

まだまだ続きます!

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