所有者不明土地等 ③

投稿日:2022年5月23日 更新日:

所有者不明土地管理命令 後編

 

前回に引き続き所有者不明土地管理命令の後編です。今回は、「所有者不明土地管理人の権限」 を細かく見ていきます。

可能であれば①から見ていただけると分かりやすくなっているかと思います。

それでは早速見ていきましょう。

 

所有者不明土地管理人の権限

前回ご紹介したように、所在者不明土地の財産管理人は弁護士や司法書士が選任されることが考えられています。

この者たちの権限はどのようなものなのか見ていきます。

 

(所有者不明土地管理人の権限)

第264条の3

  • 前条第4項の規定により所有者不明土地管理人が選任された場合には、所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産並びにその管理、処分その他の事由により所有者不明土地管理人が得た財産(以下「所有者不明土地等」という。) の管理及び処分をする権利は、所有者不明土地管理人に専属する。

 

2  所有者不明土地管理人が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。ただし、この許可がないことをもって善意の第三者に対抗することはでき ない。

一 保存行為

二 所有者不明土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

(※赤文字は全て新設規定です)

 

1項は管理処分権についてです。

管理処分権は、管理人に専属します。

対象財産管理処分権は所有者不明土地管理人専属する為、所有者は管理処分権を失うこととなります。

これによって土地管理人による管理の開始後に、土地の所有者が当該土地を売却するなどの法律関係を形成したとしても、土地の所有者による売却は効力を生じません。所有者不明土地管理による売却の相手方を常に保護する事で、所有者不明土地管理人の職務の円滑な遂行を確保するとともに、法的安定を実現します。

登記について

前回少しだけ触れましたが、土地管理人が選任された時には嘱託により管理人が登記されます。

これは土地管理人に管理処分権が専属していることを公示をしないと、このことを知らないまま、土地の所有者とする者と取引をする第三者が現れた時に、その者の取引の安全が不当に害される恐れがあるからです。

 

2は、管理人が当該土地を不当に売却したり我が物にしないようにするために、処分行為をするときには必ず裁判所の許可が必要である!と明示されています。

ただし、土地は放っておけば草や木が伸び近隣の住人に迷惑がかかることがあります。そういったことに関する土地の管理行為(草刈りなど)については裁判所の許可などは不要となっています。

つまり裁判所の許可がおりれば、古くなった建物の取り壊しや、借地関係の変更などの行為も、管理人はすることが可能となります。

 

不明相続人の共有持分について選任された管理人

不明相続人の遺産共有持分について選任された管理人は、遺産分割をする権限はありません。しかし、遺産共有持分に係る権限の範囲内で、管理や処分は可能とされています。

 

管理人の義務

所有者不明土地管理人には、所有者に対して善管注意義務を負います。

また、数人の共有者の共有持分に係る管理人は、その対象となる共有者全員のために誠実公平義務を負います。

 

「善管注意義務」とは?

(ぜんかんちゅういぎむ)

善良なる管理者の払うべき注意義務を言います。より慎重に注意を払う義務を負うということです。職業や地位に応じて相応の思慮分別を要求される義務と言い換えることができます。職業や地位に応じてというのは、客観的な判断によります。

責任を持って大切に管理しないとダメです。

 

そして少し細かいですが、管理人の解任、辞任について、管理人の報酬についての規定も載せておきます。

 

(所有者不明土地管理人の解任及び辞任)

264条の6

所有者不明土地管理人がその任務に違反して所有者不明土地等に著しい損害を与えたことその他重要な事由があるときは、裁判所は、利害関係人の請求により、所有者不明土地管理人を解任することができる。

所有者不明土地管理人は、正当な事由があるときは、裁判所の許可を得て、辞任することができる。

 

(所有者不明土地管理人の報酬等)

264条の7

所有者不明土地管理人は、所有者不明土地等から裁判所が定める額の費用の前払及び報酬を受けることができる。

所有者不明土地管理人による所有者不明土地等の管理に必要な費用及び報酬は、所有者不明土地等の所有者(その共有持分を有する者を含む。)の負担とする。

こちらは読んだまま、、となりますね。特に解説は不要でしょう。

 

 

 

 

今回はここまでです。

今回は、所有者不明土地管理人についてでしたが、所有者不明建物管理人の規定も今回264条の8に新設されました。

ほとんどの規定が土地管理人に準用されていますのでここでは紹介を省きます。

次回はもう一つの新設規定である 「管理不全土地(建物)管理命令についてご紹介していきたいと思います。

 

今回はここまでです。

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