所有者不明土地等⑤

投稿日:2022年7月3日 更新日:

管理不全土地管理命令 後編

今回も所在不明土地について、「管理不全土地管理命令 後編」です。

前回の記事の続きとなっております。前編と併せてご覧ください。早速見ていきましょう。

 

管理不全土地管理人の権限

264条の10

1 管理不全土地管理人は、管理不全土地管理命令の対象とされた土地及び管理不全土地管理命令の効力が及ぶ動産並びにその管理、処分その他の事由により管理不全土地管理人が得た財産(以下「管理不全土地等」という。)の管理及び処分をする権限を有する。

 

2  管理不全土地管理人が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。ただし、この許可がないことをもって善意でかつ過失がない第三者に対抗することはできない。

一 保存行為

二 管理不全土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

管理不全土地管理命令の対象とされた土地の処分についての前項の許可をするには、その所有者の同意がなければならない 。

 

上記が新設された条文となります。

 

管理不全土地管理命令が発せられるとその土地の管理人は、その対象された土地の管理処分権を有します。管理不全土地管理人は保全行為および、性質を変えない範囲内における、利用改良行為をすることができます。

ただし、保存行為を超える行為をする場合には、裁判所の許可を要し、管理不全土地の処分については許可の前提として所有者の同意を要します。

 

(管理不全土地管理人の義務)

 

第264条の11

1  管理不全土地管理人は、管理不全土地等の所有者のために、善良な管理者の注意をもって、その権限を行使しなければならない。

2  管理不全土地等が数人の共有に属する場合には、管理不全土地管理人は、その共有持分を有する者全員のために、誠実かつ公平にその権限を行使しなければならない。

 

善管注意義務等についてはこの章で解説していますので今回は省略しますが、要は所有者不明土地管理人の制度と同じ規定ですね。

管理人は、所有者に対して善管注意義務負います。

また、数人の共有者の共有持分にかかる管理人は、その対象となる共有者全員のために誠実公平義務を負います。そして、264条の12では裁判所の許可を得て管理人の解任ができる事。さらに13で管理人の費用報酬についても規定されています。

 

興味のある方は条文を読んでみてください。

 

管理不全建物管理命令についてですが、こちらも、ほぼ土地管理制度と同じ仕組みです。新民法第264条の14は管理不全建物管理制度について規律していますが、第四項においては、管理不全土地管理制度の規定をほとんど準用しています。

 

(管理不全建物管理命令)

 

第264条の14

裁判所は、所有者による建物の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、当該建物を対象として、管理不全建物管理人(第3項に規定する管理不全建物管理人をいう。第4項において同じ。)による管理を命ずる処分(以下この条において管理不全建物管理命令」という 。)をすることができる。

管理不全建物管理命令は、当該管理不全建物管理命令の対象とされた建物にある動産(当該管理不全建物管理命令の対象とされた建物の所有者又はその共有持分を有する者が所有するものに限る。)及び当該建物を所有するための建物の敷地に関する権利(賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(所有権を除く。)であって、当該管理不全建物管理命令の対象とされた建物の所有者又はその共有持分を有する者が有するものに限る。)に及ぶ。

裁判所は、管理不全建物管理命令をする場合には、当該管理不全建物管理命令において、管理不全建物管理人を選任しなければならない。

第264条の10から前条までの規定は、管理不全建物管理命令及び管理不全建物管理人について準用する。

 

最後に、違うところだけを簡単にみていきます。

管理不全土地管理制度と管理不全建物管理制度の違いとしましては、二項に書かれているように、1敷地利用権の取り扱いと建物の取り壊しについてです。どちらも建物特有の問題ですので特に気にすることもないかと思います。

 

今回はここまでとします。

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