相続人である旨の申出制度の創設
少し時間が開きましたが今回もそ不動産登記法の改正点についてご紹介していきたいと思います。
前回の記事をまだご覧になっていない方はそちらを先にご覧ください。
それでは早速新設された条文から見ていきましょう。
第76条の3(相続人である旨の申出等)
前条第1項の規定により所有権の移転の登記を申請する義務を負う者は、法務省令で定めるところにより、登記官に対し、所有権の登記名義人について相続が開始した旨及び自らが当該所有権の登記名義人の相続人である旨を申し出ることができる。
2 前条第一項に規定する期間内に前項の規定による申出をした者は、同条第1項に規定する所有権の取得(当該申出の前にされた遺産の分割によるものを除く。)に係る所有権の移転の登記を申請する義務を履行したものとみなす。
3 登記官は、第一項の規定による申出があったときは、職権で、その旨並びに当該申出をした者の氏名及び住所その他法務省令で定める事項を所有権の登記に付記することができる。
4 第一項の規定による申出をした者は、その後の遺産の分割によって所有権を取得したとき(前条第一項前段の規定による登記がされた後に当該遺産の分割によって所有権を取得したときを除く。)は、当該遺産の分割の日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。
5 前項の規定は、代位者その他の者の申請又は嘱託により、同項の規定による登記がされた場合には、適用しない。
6 第一項の規定による申出の手続及び第三項の規定による登記に関し必要な事項は、法務省令で定める。
上記は全て新設された条文です。
今回創設された規定である「相続人である旨の申し出」とは、この度改正され義務化となる 「相続登記申請」 を簡単に履行できるようにするための観点から創設された制度です。
制度の概要
- 所有権の登記名義人について相続が開始した旨と、②自らがその相続人である旨を申請義務の履行期間内カ(3年以内)に登記官に対して申し出ることで申請義務を履行したものとみなす制度です。
申出権者
申出をする事ができる旨は以下の通りです。
- 相続により所有権を取得したもの(特定財産承継遺言により所有権を取得した者を含む)
- 遺贈により所有権を取得した者(相続人に対する遺贈に限る。)
義務を免れる者は誰か?
相続人のうちA.B.CのうちAが相続人である申出をしたとします。
この時、登記簿に氏名、住所が記録された相続人のみが、登記義務(つまり罰則)を免れることとなります。
Aのみが申出をしたのであれば免れるのはAのみとなります。
※ただし、他の相続人分を含めた代理申請をすることもできます。
申出をする管轄
当事者の住所の最寄りの法務局を通じてその管轄区域外の不動産を含めて申出をすることができるものと想定されています。
添付書面
添付書面は申出をする相続人自身が被相続人(所有者の登記名義人)の相続人である事がわかる当該相続人の戸籍謄本を提出することで足ります。
すなわち、法定相続人の範囲及び法定相続分の割合を確定させる必要はありません。
4項–遺産分割から3年以内という登記申請義務を課した–
相続人である旨の申出による付記登記では、権利の公示はされていないにもかかわらず、その後に遺産の分割があった場合にその結果を踏まえた所有権移転登記の申請義務を再度課さないと、分割結果が不動産登記に反映されないまま放置されてしまう事をを考慮した規定です。
以上、今回はここまでとします。