今回も前回に引き続き債権譲渡についてです。130年ぶりの民法大改正があった部分を主に見ていこうかと思います。前回の記事も合わせてご覧下さい。
譲渡制限特約の効果
前回触れた通り、譲渡禁止特約制度が廃止され、新たに譲渡制限特約制度が新設されました。
債権譲渡をするに当たり、従前までは特約を結んだ場合にはその名の通り譲渡する事自体が禁止だったわけですが、新設された譲渡制限特約ではが180度方向を転換します。
上記の図で説明します。
元々の債権者であるAがBに対して100万円の債権を有しています。
Aはこの後すぐに現金が必要になったため、仕方なくこの債権をCに80万円で売りました。
この時、AとBの間で譲渡制限特約を交わしていました。Cはこの譲渡制限特約を知っていながら債権を譲り受けました。
この時Cはこの債権を有効に取得できるでしょうか?
従前までは答えは×でした。が、令和2年からの答えは○となります。
譲受人であるCの善意・悪意は関係なく債権譲渡が有効に成立します。
しかしそれでは譲渡制限の特約の意味がないじゃないか?と思われると思います。
債務者からすれば債権者が代わり、今よりも取立てがキツくなるような事は絶対に避けたいはずです。
その為に譲渡制限を付けたのに、、と。
債務者の保護
そこで新たな民法は債務者の保護のための規定を設けました。
- 債権者は債務不履行責任を負う。
債権者は自ら特約をしたのにも関わらず約束を破った張本人ですからこの者に対しては債務不履行責任(民法415条)に基づいて損害賠償請求することができます。
- 悪意(特約を知っていた)の譲り受け人に対して債務者は履行の拒絶をすることができる。
そもそも債務者としては契約の際に譲渡制限特約を結んだのですからそれを知っていた譲受人に対しては履行の拒絶をすることができます。
ただし、債権譲渡は有効に成立しています。ではこの場合どうするのか?が問題になります。
この場合、債務者にはこの場合幾つかの選択肢があります。
- 譲受人Cに対して支払う。
- 譲受人からの履行を拒絶して元の債権者である譲渡人であるAに支払う。
- 供託をする。
債務者はこの選択肢を選ぶことができるようになりました。
※ただし、②については譲受人が善意(特約を知らなかった)の場合にはこの主張ができません。
悪意である譲受人の保護
譲受人であるCは譲渡制限の特約があることを知っていたとしましょう。
今回この譲受人に対しても債権譲渡が有効であるとしたのは、取引の迅速性や流動性の確保が理由の一つであると言えます。
つまり、譲受人が悪意であったとしても債務者BがCに対して支払う意思があるのであれば、外野が騒ぐ事もなく、問題なく取引が円滑になることとなります。
そこで、債権の譲受人に対しても保護規定を置くこととなりました。
つまり、債務者Bが譲受人である自分Cに支払わないのであれば、いついつ迄に債権者に支払いなさい。
と言えることができます。(466条4項)
そしてさらにその期間内に債務者が元の債権者であるAに対して支払わないときには自らが請求できるようになりました。
債権の譲渡は誰にでも認められた権利であり、かれこれお金を貸してから、何年も経ち全く返してくれないような人も世の中にはたくさんいます。
債権者としては、そのような人の顔も見たく無いという人も多いでしょう。
金の切れ目は縁の切れ目という様にスパッと縁を切り、少しばかり貸した額よりは安くなるかもしれませんが、債権を売るという選択肢もあっていいかもしれません。
本日はここまでです。
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