今回も保証についてです。今回は企業の債務を個人を保証人に立てて企業はその個人に債務を負わせて逃げてしまおうと言う事件などがあり改正する運びとなりました。
今回はこちらをご紹介していきます。
一般条項違反
- 特定債務保証
事例ⅰ A社の財務部門を法人化して設立され、A社を中核とするグループに属するX社が、上記グループに属するB社に対し金員を貸付け、B社の代表取締役であるYが、B社の貸金債務を連帯保証した場合B社が既に事業を停止している状況下で、債権者であるX社がYに連帯保証債務の履行を求めた場合、X社の請求は認められるか。
上記の事例で最高裁は以下の①〜⑤の事情を理由としてX社のYに対する保証責任の請求は権利の濫用であるとして、X社による上告を棄却しました。
- B社がA社のグループ会社であることB社の資金はA社らグループ会社が管理していたこと。
- B社の代表取締役であるYには裁量の余地がなく、資本繰りを含む経営判断はA社の代表取締役に依存し、その指示に従わざるを得ないような経営体系であったこと。
- YはA社のグループ会社のアルバイトであったところB社設立と共に同時に、正社員となり僅か数ヶ月でB社代表取締役に就任したが、実際は従業員とほとんど異ならない立場にあったこと。
- Yは、近い将来B社が資金繰りに詰まる恐れがある状況下でB社代表取締役に就任させられ、A社の関連会社であるX社からB社が融資を受けるに際し、その債務を保証するよう指示されたものであること。
- X社によるB社への貸付が、利息制限法所定の制限利率をゆうに超える利息損害金が約定されていたこと。
要するに今回のケースはそもそも計画的に倒産を仕組み、全ての責任をダミーであるアルバイトになすりつけようと言う事件です。裁判所がこれを認めるわけはありませんでした。
もう一つ事例を紹介します。
- 求償権行使
事例ⅱ 金融機関のA社からB社が借り入れを行ない、XらがB社の借入債務に対して、連帯保証契約を締結した。
その後CがB社の借入債務に対し、物上保証をするとともに、連帯保証契約を締結しYがCを相続したところB社がA社への借入債務を返済できず、破産手続きが開始されA社がYの不動産について競売申し立てを行い、競売代金により配当金を受領したYが連帯保証人であるXらに対し求償権を行使したところxらが連帯保証人としてB社の債務をA社に対し一部弁済し、自己の負担部分を超えない弁済につき、負担部分の割合に応じてYに対し求償権を行使したXらによるYに対する求償権行使は認められるか。
こちらも当然ながら裁判所は信義則に反することを理由として、認められる事はありませんでした。
最後にもう一つ。
保証人による説明義務違反
地方在住の高齢者丙が300万円しか借りるつもりがなかったのにも関わらず、貸金業者である甲の担当者主導のもと、店第三者である乙を名義上の借主とすることで(名義貸し)甲および丙、間において1300万円の連帯保証契約が締結され丙が所有する不動産に根抵当権設定契約が締結された甲の丙に対する抵当権設定契約に基づく登記手続き乙及び丙に対する本件の消費貸借契約及び本件連帯保証契約に基づく、残元金等の支払い請求は認められるか。
こちらも債権者甲は、明らかな説明責任を果たしておらず認められることはありませんでした。
この判例は平成26年のものでしたが、ここで今回の改正に及んだものと思われます。
民法改正465条の10
保証人に対する説明義務に関して、改正民法465条の10は主債務が、事業の為に、負担する債務を含む場合において、主債務者が保証人に保証契約締結を委託し、当該保証人が個人である場合主債務者は保証の委託を受ける者に対し①財産及び収支の状況②主たる債務以外に負担している債務の有無ならびに、その額及び履行状況③主たる債務の担保としてその他に提供し又は提供しようとする者があるときはその旨及びその内容に関する情報を提供しなければならず主債務者がかかる情報提供義務に違反する場合は保証人は保証契約を取り消すことができると規定されました。
事業の債務とは個人のお金の貸し借りとは違い、莫大なものになります。
その為個人根保証契約、個人貸金等根保証契約などにも改正が含まれております。
今回はここまで。