日本では生みの親の元で育つことができない子どもたちは約45,000人います。
その約80%が乳児院や児童養護施設などの施設で暮らしています。
養子縁組と里親制度は、保護を必要としている子どもに家庭での養育を提供するための制度ですが、この制度には違いがあります。
「里親制度」は、育てられない親の代わりに一時的に家庭内で子どもを預かって養育する制度で、里親と子どもに法的な親子関係はなく、実の親が親権者となります。
里親には、里親手当てや養育費が自治体から支給されます。
「養子縁組」は民法に基づいて法的な親子関係を成立させる制度であり、養親が子の親権者となります。
養子縁組が成立した家庭には、自治体などからの金銭的な支援はありません。また、養子縁組にも2種類あり、普通養子縁組は跡取りといった様に成人に対しても適用できる制度ですが、特別養子縁組は特に保護を必要としている子どもが、実子に近い安定した家庭を得るための制度で、実の親との親子関係は終了します。
なお、2017年4月に改正児童福祉法が施行され、生みの親が養育できない子どもは、養子縁組や里親・ファミリーホームなど家庭と同様の養育環境で、継続的に養育されることが原則となりました。
今回は養子縁組について令和2年及び令和3年の改正を含め紹介していきたいと思います。
養子縁組の条件
養子縁組を結ぶ際には、年齢、独身か既婚か、血筋、配偶者の同意などの条件が必要になります。では具体的に見ていきましょう。
- 養親は20歳に達していること。
※成年者の年齢が18歳に引き下げられたことから、養親年齢も以前は成年に達したとき。という規定ぶりでしたが、養親は従来通り成年とせず20歳に達した時となりました。
更に従前は未成年者の場合でも、婚姻していれば成年に達したとみなされ婚姻擬制という制度があり、これにより19歳でも婚姻すれば養親になれる制度はありましたがこれも削除され一律に養親は20歳から、と改正されました(令和3年改正) - 養親は養子よりも年上であること。
(養親と血のつながりのある、祖父母やおじ、おばを養子にはできません。) - 未成年者を養子にする場合は、夫婦で共に養親になること。
例外① 配偶者の嫡出子を養子とする場合。
例外② 配偶者が意思表示が不能の場合。 - 既婚者が養子になったり、養子をとったりする場合は、配偶者の同意が必要。
特別養子縁組の条件
「特別養子縁組」の成立には、子の監護が著しく困難又は不適当であること等の事情がある場合において、子の利益のため特に必要があると家庭裁判所の審判が必要となります。
- 実親の同意が必要
養子となる子の父母(実父母)の同意がなければなりません。
ただし、実父母がその意思を表示できない場合又は、実父母による虐待、悪意の遺棄その他養子となるお子さんの利益を著しく害する事由がある場合は、実父母の同意が不要となることがあります。 - 養親の年齢
養親となるには配偶者のいる者(夫婦)でなければならず、夫婦共同で縁組をすることになります。
また、養親となる者は25歳以上でなければなりません。
ただし、養親となる夫婦の一方が25歳以上である場合、もう一方は20歳以上であれば養親となることができます。 - 養子の年齢
養子になるお子さんの年齢は、養親となる方が家庭裁判所に審判を請求するときに15歳未満である必要があります。
例外① 子が15歳に達する前から養親となる方に監護されていた場合
例外② 15歳に達するまでに家庭裁判所の審判を受ける事ができなかった事項についてやむを得ない事情があった時
上記例外の①、②に当てはまる場合には子が18歳に達する前までは、審判を請求することができます。
※以前は6歳⇨8歳まででした。(令和2年改正)
- 半年間の監護
縁組成立のためには、養親となる方が養子となるお子さんを6ヵ月以上監護していることが必要です。
そのため、縁組成立前にお子さんと一緒に暮らし、その監護状況等を考慮して、家庭裁判所が特別養子縁組の成立を決定することになります。
前述しました通り普通養子の場合実の親との親族関係は切れない為、実の親の財産及び、養親の財産をも相続する事ができます。
対して特別養子縁組では実の親とは縁が切れる為、相続においては特別養子は実の親を相続する事ができません。
ここにも大きな違いがあります。
なお特別養子縁組は家庭裁判所が養親となる者の収入や環境を精査しお子さんの利益の為に厳格に審査が必要となります。
再婚の際に妻の連れ子を養子にする。
両親の間に子供が授かる事ができず里親となり子を迎える。
など、様々な理由で縁組制度の活用がされています。
当然の事ながら縁組とは人生の大きな決断となります。
子供の氏の変更など縁組によって付随的に様々な問題や手続きが必要となってきます。
そういった手続きであったり、裁判所に提出する書類の作成については法律家にご相談する事をお勧め致します。
おしまい。